【中小企業の銀行対策】一部の地域金融機関が赤字決算を計上している本質的な理由とは?
今日は、一部の地域金融機関が赤字決算を計上している本質的な理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 赤字決算を計上できるだけの経営体力が温存されているとも考えられる
2 赤字を回避しなければならないような金融機関も存在する
中小企業経営者の皆様、どうぞ、ご一読下さい。
1 赤字決算も許容できる経営体力があるとも考えられる
8月も下旬に差し掛かってきたこのタイミングで、2026年3月期の金融機関の業績について、様々な報道が出てきています。
メガバンク、メガ以外の大手金融機関、地方銀行などで、2026年3月期決算が好調で、一部の地方銀行株が特定のファンドに買われて過去最高の株価を更新しているという報道がある中で、ここへきて、地域金融機関の一部で赤字決算となっていることが明らかになってきています。
一部の地域金融機関で赤字に陥っている要因が、債券安であることは間違いありません。
一部の地域金融機関では、預金残高に対する融資残高の比率(「預貸率」と言います)が低く、預貸率が低い故に、現金として金庫に余剰資金を眠らせておくわけにはいかないので、余剰資金を上部団体に預金する他、日本国債や社債などの有価証券投資に余剰資金を振り向けることになってしまいます。
現実に、地域金融機関の本部組織の一部である資金部、証券部等の部署には、様々な証券会社などが運用資産の提案に日参しています。
一方、円安と債券安によって長期金利が上昇してしまうと、地域金融機関が保有している投資有価証券に含み損が発生してしまいます。
投資有価証券に発生している含み損は、売却しない限り、損失として計上されることはないため、含み損を損失処理せずに放置する地域金融機関が中には出てきます。
他方で、預貸率の高いメガバンク、メガバンク以外の大手金融機関、地方銀行大手では、金利上昇分を自行短期プライムレートを引き上げることによって融資先に貸出金利を引き上げる一方、預金金利の上昇分は貸出金利の引き上げ幅よりも小さいため、大幅な増収増益となって、好調な業績となって現れてきています。
一部の地域金融機関の赤字決算と言っても、その要因は一様ではありません。
地域金融機関の赤字の要因の一つは、本業の預貸と投資有価証券の運用と、両方が立ち行かなくなり、やむなく赤字決算を強いられているケースです。
もしかすると、破綻目前の金融機関ということもできるかもしれませんが、現在の日本の金融情勢を鑑みると、例え、小規模で地方の一地域金融機関であっても、破綻に追い込まれて、ペイオフの発動となるような事態は金融当局としては、何が何でも回避しなければなりません。
万が一にも「地域金融機関は危ない」という社会情勢になってしまっては、預金が地域金融機関から一気に流出し、メガバンク等大手金融機関に預金が流入してしまう可能性が高まらないとも限りません。
バブル崩壊後の金融不安に端を発した拓銀、旧兵庫銀行、旧幸福銀行などの金融機関の破綻の連鎖はなんとしても繰り返してはなりません。
一方、地域金融機関の赤字の要因の二つ目が、投資有価証券の含み損をこの際全て損切りして、一気に赤字を出し切ってしまうことも想定されます。
投資有価証券の含み損分を売却して実際の損失として計上してしまうことによって、含み損を内包した投資有価証券を一掃してしまって、身綺麗になってしまうというポジティブな赤字決算も有り得ます。
自社のメインバンクが赤字決算となれば、中小企業経営者は心中穏やかとは言えなくなりますが、自社のメインバンクの赤字の要因がネガティブなものなのか、はたまたポジティブなものなのかを見定める必要があるのです。

2 赤字を回避しなければならないような金融機関も存在する
赤字決算の地域金融機関が報道ベースに乗る中、中小企業の銀行対策を祖業としている弊所としては、赤字決算よりも、赤字決算を相当程度意図的に回避したのではないかと勘繰られるような地域金融機関が存在することを無視することはできません。
弊所のお客様を通じて、多くの金融機関、中でも地域金融機関と接触している感からすると、「ここは厳しいんと違うか」と直感的に感じられる地域金融機関が実際あるのです。
「ここは厳しいんと違うか」と感じられる幾つかの地域金融機関の2026年3月期のディスクロージャー誌を紐解いてみると、投資有価証券での資金運用ウェイトが高いことと、投資有価証券が内包する含み損が相当程度計上されています。
また、預貸率が低いため、貸出金利の引き上げ効果が十分浸透していないことと、不良債権の引当計上による与信費用増加によって、預貸の本業での利益が大幅に低下しています。
本業での不振をカバーするため、数少ない含み益のある投資有価証券の売却益がドーンと多額に計上されていて、3月期末にかけて、必死で益出しを急いだ形跡がバレバレで、赤字決算を全力で回避したことが丸わかりです。
数少ない含み益のある投資有価証券を手仕舞いしてしまった後に残った投資有価証券は、含み損があるものばかりです。
期が開けた4月以降も債券安が進行してしまっているので、手元に残った投資有価証券の含み損はさらに拡大していることは明らかです。
次の2026年9月中間期と2027年3月期は、どのように益出しする意図なのか定かではありません。
「とりあえず、2026年3月期の目の前の決算をいかに乗り切るかを最優先で考えろ。来期は来期の風が吹く」とでも号令がかかったのかはわかりませんが、粉飾とは言わないまでも、赤字決算を出したら終わりという地域金融機関の経営陣の本音が現れているのかもしれません。
いずれにしても、「金利のある世界」が約30年の年月を経て復活した今、金融機関の優勝劣敗の姿がいよいよあからさまになってきました。
中小企業経営者は、成長性と収益性を高めていくための前向きな投資を行えるよう、自社のメインバンクを経営体力の強い金融機関にシフトさせていく必要があるのです。
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。

