【中小企業の銀行対策】真っ当な借入金の条件が約定通りの返済が可能である理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、真っ当な借入金の条件が約定通りの返済が可能である理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 貸金業の永遠の課題が債権回収の難しさにある
2 返済原資の確保が融資の可否の決定的な要素である
どうぞ、ご一読下さい。
1 貸金業の永遠の課題が債権回収の難しさにある
中小企業経営者にとって、借入金についてネガティブなイメージを持っている方がいらっしゃるかもしれません。
同じ業界の同業他社が倒産した場合、やれ「銀行に潰された」だの、「借入が多過ぎて資金が回らなくなったらしい」だの、この手の噂が立つのは珍しい話ではありません。
それなら無借金であれば良いのかと言うことになるのですが、中小企業の多くのビジネスモデルが、運転資金が必要であったり、製造業では設備投資が必須であったりして、借入金が会社の成長エンジンになることもまた事実です。
他方、資金の貸し手側の金融機関(銀行等)の目線はどのようなものでしょう?
銀行を含めた貸金業の一番の難しさは、債権回収をいかに適格に行われるかに尽きます。
実は、おカネを貸し付けるのは、素人でもできる簡単なことです。
ところが、貸したおカネを、利息をつけて、耳を揃えて返してもらうことは極めて難しいのです。
貸金業で債権回収が難しい理由の一つとして挙げられるのが、貸金業というマーケットに「逆選抜」という経済効果が起こることです。
わかりやすく言えば、市中の消費者金融業者は、法定金利ギリギリの年率14%強の利息を取って一般個人に融資をしていますが、トヨタの章男会長やソフトバンクの孫会長は、大金持ちなので、間違っても、消費者金融からおカネを借りることはありません。
消費者金融業者から法定ギリギリの高利でおカネを借りるのは、誤解を恐れずに言ってしまえば、低所得者で、生活のためにおカネを借りている人たちです。
通常の消費財の「選抜」というのは、条件を厳しくすればするほど質の良いものや人が残ります。
わかりやすく言えば、試験の合格点を60点から90点に引き上げれば、合格者の質は高まります。
ところが、貸金業マーケットの「逆選抜」では、条件を厳しくすればするほど(利率を高めれば高めるほど)、質の悪いお客が残ってしまうのです。
この逆選抜が起こるのは、貸金業と保険業の二つの業界だけです。
保険業も同様で、余命3ヶ月と告知されたがん患者が仮に10百万円の保険料を払っても、亡くなった後に遺族が手にする保険金30百万円の保険に入れるのなら、10百万円の保険料を支払うかもしれないのです。
銀行を含む貸金業において、債権回収が難しい背景には、この逆選抜があるのです。

2 返済原資の確保が融資の可否の決定的な要素である
銀行を含めた貸金業というマーケットが持つ逆選抜という特殊なマーケット特性についてお話ししましたが、貸金業者へ話が逸れましたので、元に戻ります。
銀行等金融機関において、融資の可否を含めて融資全般の判断するのに際して、全て、稟議手続きを経ることになります。
ニューマネーの審査において、金融機関にとって最も重要な判断材料となるのが、上記で触れた債権回収の可否です。
そもそも銀行等金融機関は、不特定多数の預金者から預かった預金を原資として融資を行なっているので、回収の目処がない融資を実行することは絶対に許されません。
仮に、回収見込みのない融資を実行すれば、担当者も、役席も、次席も、部店長(支店長等)も、本部の与信所管部署も、背任の疑いを持たれ、下手をすると、手が後ろに回ってしまうことにもなりかねない重大な不正行為です。
逆に言えば、中小企業経営者側とすれば、「ちゃんと返済ができますよ」ということを明確化すれば、稟議は非常に通りやすくなります。
返済の方法は、たとえば、夏場の季節資金で仕入が増加して支払が先行するけれど、10月末には夏季の繁忙期の売掛金が回収できるので、10月末に期日一括で返済するとか、長期運転資金で期間7年で融資を受ければ、返済を含めた資金が回るということを明確にすることが重要です。
「ちゃんと返済できますよ」を明確化するために必要なツールが資金繰り表です。
少なくとも、向こう1年間、融資を受けることで、資金が回ることを管理するための資金繰り表の作成は、融資を受ける以上、中小企業経営者が行うべき重要な仕事です。
このように、融資の可否の判断に際して、返済を含めた資金が回ることを管理することは極めて重要です。
中小企業経営者は、自社の資金繰りを経理担当に任せきりにすることなく、資金繰りを安定化させることが経営者の重要な責務であることを認識する必要があるのです。