【中小企業の銀行対策】利上げと地域金融機関との相関関係を知っておくべき理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、利上げと地域金融機関との相関関係を知っておくべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 貸し渋りが起こる可能性を考える
2 メインバンクの健全性を点検する
どうぞ、ご一読下さい。
1 貸し渋りが起こる可能性を考える
50代以上の中小企業経営者にとっては、かつてのバブル全盛期とバブル崩壊の信用不安の記憶が過去のものとは言えないものとなっています。
バブル崩壊の信用不安は、不動産向けを中心に、金融機関の融資が不良化し、不良債権が金融機関の経営体力を削いだことによるものです。
金融当局は市場金利を低水準にとどめることによって、金融機関の体力を復活させ、近時では、金融機関の信用不安が噂されるようなことは皆無となりました。
しかしながら、長らく続いたゼロ金利政策が転換され、「金利のある世界」が戻りつつあります。
ゼロ金利政策自体が緊急避難的なもので、長く続いてしまいましたが、「金利のある世界」はむしろ健全な経済社会なのです。
金融機関の信用不安が噂されることは無くなりましたが、地域金融機関にとっては、金利の上昇がボディーブローのように効いてきつつというのが本当のところです。
なぜなのでしょうか。
3メガバンクをはじめとした大手金融機関は、概ね預金が融資を上回る「ローンポジション」にあります。
一方、農林中金が象徴的ですが、預金が融資を大きく上回り、融資で運用できない余剰資金を日本国債(JGB)をはじめとした公社債や外国国債で運用しています。
また、特に、地方の地域金融機関においても、地域内の中小企業が廃業したりして、融資先件数が減少すると、預貸率(=融資残高÷預金残高×100%)が50%を割り込むような低預貸率の金融機関が珍しくありません。
預貸率が低ければ、融資で運用できない資金を金庫で保管していても運用益は得られないので、日本国債等安全な公社債等で資金運用しています。
ところが、長期金利の上昇(日本国債の流通価格は下がってしまう)によって、地域金融機関は、保有する日本国債に含み損が発生してしまいます。
債券の保有目的を「満期目的」としている限り、含み損を直ちに損失計上する必要はありませんが、満期が順次到来する都度、売却損が発生するわけですから、言ってしまうと将来必ず破裂する時限爆弾を抱えているも同然なのです。
このため、このような含み損を抱えたままの金融機関は、資産を圧縮するため、積極的に融資を出すことを躊躇しないとも限りません。
あまり煽るつもりはありませんが、地域金融機関を巡る経営環境は実はそんなに甘いものではないのです。

2 メインバンクの健全性を点検する
このような地域金融機関の経営環境を勘案したのかは定かではありませんが、金融監督当局は、地銀、第二地銀、信金、信組といった金融機関の業態を超えた経営統合について、資金の支援を行うことを表明しています。
金融秩序を守るためにも、金融機関が破綻するような事態は考えにくいのですが、とはいえ、業態を超えた金融機関同士の経営統合が進んでいく可能性は十分考えられます。
では、中小企業経営者の目線としては、このような金融機関の経営環境をどのように評価すべきでしょうか。
まず、最も簡単に経営者ができることは、半期毎に金融機関が作成するディスクロージャー誌をチェックすることです。
ディスクロージャー誌は、金融機関営業店の待合スペースで閲覧できる他、公式ホームページでも公開されています。
ディスクロージャー誌の中で、運用資産について、取得原価に対して時価がいくらで含み損益がいくらあるのかを読み解くことができます。
預貸率が高く、運用資産に依存する必要がない金融機関であれば投資有価証券にかかる含み損が発生する懸念はありませんし、かなり以前から保有したままで、含み益が依然として確保できている金融機関であれば、融資を手控え、総資産を圧縮する懸念は払拭できます。
一方、投資有価証券に含み損が多く発生している場合には、今まですんなりプロパーで資金を出してくれていたけれど、保証協会の保証をつけて、保全を手厚くするようなケースが起こらないとも限りません。
中小企業にとっては、金融機関、中でもメインバンクは資金調達の要です。
よって、中小企業経営者は、自社のメインバンクの健康状態を定期的にチェックしておく必要があるのです。

