【中小企業の銀行対策】自己資本比率だけで金融機関の健全性を判断できない理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、自己資本比率だけで金融機関の健全性を判断できない理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 金融機関の自己資本比率は中小企業のそれのイメージとは合致しない
2 金融機関の自己資本比率と預貸率は密接に関係する
中小企業経営者の皆様、どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関の自己資本比率は中小企業のそれのイメージとは合致しない
2026年7月も今日でおしまいで、明日から8月に突入します。
新聞誌上でネット上で、金融機関の2026年3月期の業績について、様々報じられるようになりました。
各金融機関の2026年3月期のディスクロージャー誌も間もなく出揃うタイミングです。
一方、金利の上昇局面がいよいよ現実のものとなり、今日の日本銀行の政策金融決定会合では政策金利は前回と同様、1.000%程度で据え置きという判断がなされましたが、この後も、金利は上昇局面が続くことが予想されます。
バブル崩壊時の例を紐解くまでもありませんが、金利上昇局面では、金融機関の不良債権がドドっと表沙汰になったり、不祥事も報道されるようになります。
関西では、全東信に大口貸出債権を保有していた金融機関が続々明らかになっていることもあり、中小企業経営者の中には、「うちの会社のメインバンクはホンマ、大丈夫なんやろか」と不安に感じている方がいらっしゃるかもしれません。
このような不安を感じていらっしゃるかもしれない中小企業経営者の皆様に、近時の金融機関の経営健全性への理解を深めて頂くことを勘案して、今日は、金融機関の自己資本比率について掘り下げてみることにします。
中小企業経営者が思い抱く自社の自己資本比率というのは、自社のBS(貸借対照表)上で、「自己資本比率」=「資本の部(株主資本合計の部)」÷「総資産」×100%で算出されるもので、当たり前ですが、自己資本比率が高ければ高いほど、安全性が高くなるとされます。
金融機関の場合も、自己資本比率が高ければ高いほど、健全性がより担保されることに違いはありません。
ところが、自己資本比率の分子の部分が、中小企業と金融機関とに間で違いがあります。
次の章では、両者の具体的な違いについて掘り下げてみることにします。

2 金融機関の自己資本比率と預貸率は密接に関係する
中小企業も、金融機関も、自己資本比率が安全性と健全性を測る経営指標であることは間違いありませんが、金融機関の自己資本比率の分子には、資産の信用リスクが加味されています。
早い話、信用金庫、信用組合、農業協同組合が自前で融資で運用できない場合、上部団体である信金中央金庫、全信組連、都道府県信連や農林中央金庫に預金として資金運用をします。
ディスクロージャー誌の資産の部では、「預け金」の勘定科目で、現預金の一部として流動資産に計上されtれいます。
信金中央金庫、全信組連や農林中金への「預け金」は金融機関への預金なので、信用リスクはゼロと見做されます。
あるいは、日本国債を数多く保有して余剰資金の運用に充てていても、国が発行する国債なので、「預け金」と同様、信用リスクはゼロとなります。
一方、大信、シティといった大阪の大手信用金庫はそもそも預貸率(=貸出残高÷預金残高×100%)が高いので、いかに優良先への融資先が多かったとしても、中小企業向け融資は一定の信用リスクを内包しているとされてしまうので、預貸率が高ければ高いほど、自己資本比率が低く出てしまいます。
これらを平たくいってしまうと、自前で融資先を数多く開拓して、厳密に自己査定を行なって、保守的に融資先を管理できている金融機関ほど、自己資本比率は低くなってしまいます。
他方で、自前の融資開拓力が弱く、上部団体への「預け金」や国債等の投資有価証券への依存度が高いほど、自己資本比率は高く見えてしまうという大いなる金融機関の自己資本比率の矛盾が明らかになってくるのです。
さらには、長期金利の上昇に伴って、地域金融機関の一部には、投資有価証券に大きな含み損が発生しています。
現に、稚内信用金庫は、破綻リスクが顕在化したわけでも、ペイオフのリスクがあるわけではありませんが、預貸率が20%程度に過ぎず、投資有価証券の含み損の顕在化によって、予防的に信金中央金庫に資金支援を要請するに至っています。
地方銀行、信金や信組といった地域金融機関の取引先中小企業経営者からすれば、上部団体への「預け金」や国債等の投資有価証券に資金が消えてしまうと、その営業地域内には信用創造が機能せず、地域金融機関であるにもかかわらず、その地域外に資金が流出してしまうことにもなります。
地域金融機関で、預貸率が低く、かつ、自己資本比率が低いほど、資金の地産地消から遠ざかってしまって、本来の地域金融機関としての役割を十分果たすことができなくなってしまうのです。
今時、地域金融機関役職員の中で、「うちの金融機関の自己資本比率は国内基準の4%を大きく上回っています」などと眠たい言葉を発するとは思えませんが、中小企業経営者は、自社のメインバンクが将来に渡って元気で、健全な金融機関であるためにも、見かけの自己資本比率の高さだけをもってして、金融機関の健全性を判断するようなことがあってはならないのです。


