【中小企業の銀行対策】金融機関の本質が性悪説である背景とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関の本質が性悪説である背景について考えてみます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 金融機関は昔から痛い目に遭ってきた
2 金融機関に限らず世の中は性悪説で溢れている
どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関は昔から痛い目に遭ってきた
中小企業、とりわけ非上場のオーナー会社からすれば、取引金融機関、特に、メインバンクは資金調達の大切なステークホルダーです。
中小企業経営者は、メインバンクとガッツリ握るためにも、金融機関というユニークな組織特性をしっかり把握しておくことが、極めて重要です。
金融機関の組織特性として挙げられるものの一つが、「性悪説を前提にしている」ということです。
つい最近、メガバンクの雄である天下の三菱UFJ銀行で役席者が貸金庫から金品を盗み出すという前代未聞の大事件が明るにみでて、多くの中小企業経営者から、「あの三菱銀行が!」とか、「天下のUFJで何ていうことや!!」と嘆きの声が多く聞かれました。
折しも、今日、またしても、メガバンクの一角を担うみずほ銀行でも、行員による貸金庫窃盗事件が報じられました。
メガバンクの行員の賃金水準は、中小企業のそれをはるかに上回るもので、激務ではあるものの、高待遇であることは疑いなく、「なんで、メガバンクの行員が悪さをするのか意味わからん」というのが世間の率直な反応だといえます。
貸金庫の管理のみならず、金融機関の営業店では、現金をはじめ、多くの「現物」を取り扱っているため、定期的に検査部の検査役(概ね支店長級の人)が本検査や部分検査で営業店を臨店し、不正が行われていないかチェックを重ねています。
にもかかわらず、メガバンクでの相次ぐ不祥事は目を覆いたくなるものがあります。
銀行内部にとどまらず、特に、金融機関の歴史は融資先との相次ぐトラブルとの闘いでもありました。
融資を引っ張るために、粉飾決算は未だなくなっておらず、古くて新しい金融機関の課題ともいえます。
資金に詰まった建設業者が架空の工事請負契約書と請書を偽造して工事見合いの引当融資を受けても、工事自体が架空なので、返済原資となる最終の工事代金はいつまで経っても入金されず、返済の見込みが立たなくなることも散見されました。
架空の工事の引当融資を防止するため、金融機関担当者は、引当融資の審査の際には、実際の現場に行って、間違いなく工事がスタートしている現場と、工事の概要を示す看板を写真撮影することが必須となっています。
このようなことから、金融機関は、おそらく、どの業種、業態よりも、コンプライアンスにうるさい組織であることは間違いなさそうです。

2 金融機関に限らず世の中は性悪説で溢れている
金融機関がコンプライアンスを非常に重要視している背景について、上記でお話ししました。
中小企業経営者からすると、金融機関とのやりとりの中で、「こりゃ、やりすぎなんと違いますか?」と違和感を感じたとしても、その背景には、金融機関が不正やトラブルの歴史からその防止策を学んできた結果であると納得するほかなさそうです。
とはいえ、世の中、コンプラ流行りです。
上司が部下に業務の中、「こうやってすべきやで」と言ったつもりなのに、それが場合によっては指導ではなく、パワハラだと認定されてしまったりすれば、上司の方が部下に忖度しなければならなくなってしまいます。
容易に「今日は2時間残業で、皆、頑張ろう!」と気合を入れることも躊躇してしまいます。
特に異性に対しては、もっともっとデリケートで、女性でも男性でも、「それ、セクハラです」と一刀両断されてしまいかねません。
「〇〇ちゃん、今日も可愛いねえ」などのおベッカも御法度です。
正直、昭和45年生まれの北出とすれば、正直なところ、「ちょっとやりすぎでは・・・」と感じてしまいます。
とはいえ、パワハラやセクハラと認定されてしまいかねない行為は、労働争議の火種にも発展しかねません。
そこらあたり、中小企業経営者は、「やりすぎと違うん」と感じられる金融機関のコンプライアンスのあり方を見習うことも一考です。
このように、金融機関のみならず、世の中は性悪説で溢れています。
中小企業経営者は、財務体質強化に加えて、自社でできるコンプライアンスを積極的に推進し、令和の時代にマッチした会社に改造する弛まぬ努力が必要なのです。