【中小建設業の銀行対策】引当融資の返済期限が迫るタイミングで中小建設業経営者が心得ておくべきこととは?
今日は、中小建設業の銀行対策として、引当融資の返済期限が迫るタイミングで中小建設業経営者が心得ておくべきことについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 引当工事の進捗状況をメインバンクと逐一共有する
2 引当融資は期日完済が原則である
どうぞ、ご一読下さい。
1 引当工事の進捗状況をメインバンクと逐一共有する
令和7年度がスタートして2週間以上が経過しました。
建設業界では、年度末の公共工事が完工して一段落という頃ですが、特に、建設業界が活況な大阪・関西地区では、土木では民間の造成工事の現場が本格的に動き出してきたり、分譲マンションの新築工事があちらこちらで目につきます。
地方はとにかく、万博とインバウンド需要が旺盛な大阪の建設業界は、大手から中小まで現場は大忙しです。
大忙しの年度始めで、まずは現場をしっかりとこなしていくのは当然ですが、4月に差し掛かると、年度末完工の公共工事の引当融資(工事見合いの手形貸付)の返済期日が迫ってきます。
多くの金融機関では、請負契約書の完工期日の40日後を目処として、手貸の返済期日を設定することが多いのですが、年度末完工の引当融資の返済期日は5月10日(今年は5月10日が土曜日なので5月12日)となっていることが想定されます。
現場が順調に進んで、完成検査もパスできれば、役所から元請工事業者への最終工事代金の振込入金は早ければ今月中です。
弊所の中小建設業のお客様で、メインバンクから引当融資を受ける場合は、完済するまで毎月資金繰り表と受注明細を更新して、メインバンク担当者とお客様の社長を交えて、月次モニタリングを行っています。
月次モニタリングの中で、引当工事の現場の進捗状況をメインバンクに報告しているので、万が一、工事が何らかの理由で遅延して、工期が延びてしまうことが懸念される場合、逐一、メインバンク担当者に共有しています。
万が一、工期が遅延する場合には、その理由によっては、手貸の書き換えで期限を延長するのか、最悪の場合、他の入金を寄せ集めて、期日に無理矢理にでも完済するのか、早い段階からメインバンクと擦り合わせるようにしています。
中小建設業者がメインバンクから引当融資を受ける限りにおいては、メインバンクへのモニタリングは必須なのです。

2 引当融資は期日完済が原則である
このように、年度末工期の引当融資の手形期日はもう目の前です。
いうまでもありませんが、引当融資は、期日完済が原則中の原則です。
引当物件の工事は年度末に仕上げたものの、想定よりも工事原価が嵩んでしまって、原価高となったため、役所からの入金があっても、引当融資を完済すると、資金ショートしてしまって、給料が払えないというケースが最悪です。
特に、大阪では、工事が活況であるため、職人が奪い合いで、工期を遵守するあまり、労務費も外注費も当初の想定を上回ってしまって、採算割れとなるリスクは高まるばかりです。
今の段階で、メインバンクに「給料が払えないので、引当の返済を待ってくれ」ということになると、金融機関側も困ってしまいます。
引当の手貸を期日を延ばして書き換える場合には、それなりのやむをえない事情がない限り、稟議は承認されません。
手貸の完済を待つことの要請を受けた担当者は上席に上げるほかありませんが、報告を受けた支店長は怒り心頭です。
「あそこはあかん。引当は出せん。今後は保証協会保証付の約弁付きでないとニューマネーは出さん」と支店長が即断してしまいます。
「お前、なにやっとったんや!」
担当者もコテンパンに支店長の大目玉をくらうことにもなります。
これでは今後、引当融資を調達することが難しくなり、これまでのように元請の大型物件の受注が困難になって、元請の下請けで、かつ、工事の進捗見合いでおカネをもらえるような受注した取れなくなってしまいます。
これでは、受注機会喪失に直結します。
いうまでもありませんが、引当物件の工事の進捗と原価管理はより一層の厳格な管理が必須です。
中小建設業経営者は、受注機会を確保するためにも、引当融資の対象工事は、現場監督任せにするのではなく、自ら、現場の進捗管理と原価管理を徹底する必要があるのです。
【中小建設業経営者の皆様へ】メインバンクとの信頼関係強化による受注機会拡大の実現へもご一読下さい。
