【中小建設業の銀行対策】公共工事受注に必須の履行保証の重要性とは?
今日は、中小建設業の銀行対策として、公共工事受注に必須の履行保証の重要性について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 履行保証は公共工事受注に必須である
2 履行保証と銀行の引当融資はセットである
どうぞ、ご一読下さい。
1 履行保証は公共工事受注に必須である
「履行保証」の言葉を聞いて、「そんなもん、言わずと知れたことやないか」と余裕をかます中小建設業経営者がいれば、「なんやそれ、初めて聞いたわ」と驚きを隠せない中小建設業経営者がいるかも知れません。
「履行保証」とは簡単にいってしまえば、公共工事を受注した建設業者が、工期の途中で経営が立ち行かなくなった場合、公共工事を発注した都道府県や自治体、あるいは国の省庁が被る損失を補填するための保証制度です。
都道府県や自治体、あるいは国の省庁が発注する公共工事を受注する建設業者であれば、履行保証制度を利用することが必須となっています。
履行保証制度をもう少し掘り下げると、損害保険会社が自治体が受ける損害を補填する「金銭的保証」と、西日本建設業保証株式会社(東日本の場合、東日本建設業保証株式会社)の保証会社が受注した建設業者と連帯して残りの工事を責任負担する「役務的保証」との2つの制度があります。
「金銭的保証」の場合、銀行等金融機関でも制度として受けることができるようなのですが、銀行等の金融機関では基本的にほとんど実績がありません。
メインバンクの担当者に「履行保証制度受けてくれへんか」と頼んでも、「社長、それってなんですか?」とボケられるのが一般的です。
一方、基本的に「金銭的保証」は損害保険会社が受けてくれるのが一般的です。
東京海上日動や損害保険ジャパン等の損害保険会社であれば、十分な実績を有しています。
ところが、損害保険会社からすると、万が一、請負業者がギブアップして金銭的保証を行うことになった際は、大きな損失が発生します。
代理店を含めて、損害保険会社は主体的に「うちがやらせてもらいます」と言ってくれるケースは稀のようです。
このリスクヘッジのため、損保代理店としては、「履行保証は受けさせてもらいますが、工事保険、自動車保険、火災保険など御社の損害保険はうちで受けさせてもらいます」とバーターを要求してくることが多いのです。
損害保険会社は、履行保証を受ける際には、決算書、請負契約書の写し、受書の写し等を徴求して、与信枠を設ける審査を行います。
従来から公共工事を受注している建設業者は、例えば、建設業許可で特定を維持するためには、純資産額40百万円以上をキープしなければならないことなど、常日頃から、財務内容の健全化に注力しているため、履行保証もスムーズに下ろしてもらえます。
しかしながら、例えば、従来から一般住宅を請け負ってきた建築業者が、一般住宅の発注件数の減少を受けて、公共工事に新たに参入した場合、BSが簿価ベースでも債務超過になっているケースがなきにしもあらずです。
損害保険会社もみすみすリスクの高い履行保証を受けるわけにはいかないため、BSが債務超過となっている場合には、履行保証をそもそも謝絶したり、履行保証の金額を限定するケースがどうしても発生してきます。
このように、履行保証は公共工事受注に必須であることと、履行保証を気持ちよく損保会社に受けてもらうためには、財務の健全化が必須なのです。

2 履行保証と銀行の引当融資はセットである
履行保証を気持ちよく西日本建設業保証株式会社や損保会社に受けてもらえたところで、ようやく公共工事のスタートラインに立つことになります。
ここからは、工事の進捗管理を徹底して工期を遵守すること、原価管理を厳格に行なって、当初の実行予算通りもしくはそれを上回ることができる工事粗利益を獲得しなければなりません。
資金繰りとしては、当初に受領する40%の前受金は、工事が進むに従って、材料費、外注費、現場経費に消えていって、最終工事代金の入金までの立替資金をメインバンクから工事見合いの引当融資を受ける必要が出てきます。
当座預金の平残が5億円くらいあるような建設業者であれば、引当融資は必要なく、自己資金で回すことができるかも知れませんが、当座預金の平残が5億円あるような中小建設業は早々見当たりません。
工事見合いの引当融資は、基本的に保全面で信用扱いになるため、財務の健全化が必須です。
損保会社等からの履行保証とメインバンクからの引当融資はいずれも財務体質が健全であることが必要なので、履行保証と引当融資は、いわばセットと言える存在です。
2025年も残りわずかとなってきましたが、公共工事の工事の進捗は年明けから年度末までがピークを迎えます。
中小建設業経営者は、公共工事を受注していくことで会社の持続性を高めていくためには、財務体質の健全化を更なる良化が必要不可欠なのです。
【中小建設業経営者の皆様へ】メインバンクとの信頼関係強化による受注機会拡大の実現へもご一読下さい。

