【中小企業の銀行対策】精緻な資金繰り表は生命線である
経営改善が必要な会社から、経営者からご相談を頂戴した時、北出が必ずお聞きするのが「資金繰り表は作成されてますか?」です。
北出の勝手な肌感覚ですが、北出のその質問に、「はい、作ってます」とお答えになる確率は概ね20%程度のように思えます。
どこの会社も税務顧問の会計事務所がついているので、試算表はほぼ100%あるのですが、資金繰り表はなかなか経営者の中で回せていないケースが多いようです。
試算表は、PLで先月の売上はいくらで、原価は何%、売上総利益がなんぼで、販管費によって営業損益でこのくらい儲かりました発生ベースの損益のフロー実績で、BSでは、売掛金、買掛金が増減して、長期借入金の返済がいくらで、現預金がなんぼになりましたというストック実績です。
これらを踏まえて、今月、来月はこういう営業方針を立てていこうということになるのですが、多くの会社で資金繰り表はなぜ作成されていないのでしょうか?
そもそも、資金繰り表の正体はどういったものなのでしょうか?
資金繰り表の正体を一言で表現すると、「会社の家計簿」です。
先月以前の試算表から、入出金の実績を集計して、発生ベースの損益と入出金の相関性を見出して、その相関性を演算式に落として、今月以降の売上高、原価、経費、借入金の返済をシミュレートするというのが資金繰り表作成の実務です。
資金繰り表の大きな役割は、未来の入出金を想定して、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年後のフリーキャッシュフロー(FCF)を計算するものです。
資金繰り表を作成して、月末資金残高がマイナスにならなければ、資金ショートしない、即ち、会社は生き続けられるということになります。
ここで注意しなければならないのが、月中、現預金残高のボトム(最も少なくなるタイミング)が会社によっては、月末とは限らないことです。
給料の支払、買掛金の支払といった大きな支払が月末ではなく20日であれば、資金繰り表上では月末資金残高がプラスでも、月中の20日に資金ショートが発生する可能性があるため、そこを留意する必要があります。
また、資金繰りに関しては、業種業態特有の商慣習も無視できません。
例えば、即日現金回収比率が高いスーパーのような小売業は、発生ベースの損益が赤字になっても資金ショートは起きにくくなります。
その理由は、買掛金の支払は翌月なのに、売上計上と同時に即日現金回収できるためです。
他方、建設業や卸売業のような業種では、支払が先行する一方で、売掛金の回収が後々にずれるため、発生ベースの損益が黒字でも一時的に資金ショートしてしまうことがままあります。
特に、支払先行、売掛回収後々となる業種・業態では、発生する立替資金は正々堂々と金融機関から短期運転資金を調達するのが合理的です。
金融機関から短期運転資金を調達するためにも、そのような業種業態では資金繰り表は必須アイテムなのです。
中小企業にとって、より精緻な資金繰り表を作成することが生命線です。
中小企業経営者の皆さん、資金繰り表は作成されてますか?
作成されていないのであれば、早速、経理部門から必要な情報をかき集めて、資金繰り表を作成することにしましょう。
資金繰り表は、転ばぬ先の杖、なのでありました。