【中小企業経営者の心得】粉飾決算は毒饅頭である

中小企業は、通常年1回、決算を行います。
会社にとってみれば、決算は年に一度の総決算なのであって、決算書は「通信簿」そのものです。
売上は伸びたのか? 売上総利益率は改善したのか? 人件費は適正か? 余計な経費は増えていないか?
ついつい、経営者は損益計算書を重視しますが、金融機関はPLも大事ですが、BSをより重要視します。
現預金は十分か? 売掛金で死んでいるのはないか? 社長向けの貸付金は出ていないか? 金融機関が把握していない設備投資がなされて、有形固定資産が増加していないか? 繰延資産のような資金化できない資産はないか? うち以外の金融機関で借入が増えていないか? 利益処分によって内部留保が流出していないか?
BS、PLだけではなく、勘定科目明細は金融機関でしっかりチェックされます。
また、別表や法人税・消費税の申告書も同様です。

会社にとって、通信簿である決算書は、金融機関から定量面で評価される最大の判断材料です。
経営者としては、「前期赤字で、今期も連続赤字となれば、金融機関の評価が落ちるのでは? この前、メインバンクの担当者が『社長! 2期連続赤字はあり得ませんよね』と笑って言うてたやないか? あかんあかん、2期連続赤字はなんとしても避けやんとあかん」と焦りを感じてしまいます。
実際、2期連続赤字となれば、下手をすると債務者区分が正常先を維持できなくなる可能性が出てきます。
仮に「その他要注意先」にでも分類されたら、タイムリーに融資を受けられなくなるかもしれん・・・
経営者は安眠していられなくなります。
そこで、経営者の頭の中で「この際、ちょっと、決算書、いじってみるか。いじった分は、来期取り戻して帳尻合わせればええ話や」と悪魔がささやいたりします。

しかし、この粉飾決算ほど、恐ろしいものはありません。
粉飾決算に手を出してしまうと、まさに「毒饅頭を食う」のと同じことです。
ほとんど麻薬です。
一度でも手をつけてしまうと、なかなか足を洗うことはできません。
また、金融機関としても、粉飾した決算書にて格付けをつけたり、与信判断を行うため、詐欺行為と言われても仕方がありません。
円安、新型コロナウイルス、資源と原材料高と、中小企業を巡る経営環境は厳しい中にあって、一度手をつけてしまった粉飾分を来期に取り戻せるほど、世の中、景気は良くありません。
また、粉飾すると言っても、いじれるところは大体決まっているので、特に金融機関本部の審査役や調査役は業種割で担当していたりするので、明確に「粉飾やないか!」と指摘しないまでも、「お、これ、ちょっとおかしいな」とか「辻褄合わへんやないか」と直感的に見破られてしまいます。
例えば、建設業であれば、未成工事支出金を増やすか未成工事受入金を減らすかぐらいが粉飾の常套手段です。
定期的に立替資金の短期資金を調達していて、資金繰り表を提出していれば、次期に繰り越した工事と入出金を突き合わせれば、一目瞭然で、「粉飾で決まりや!」で、金融機関からは無言のイエローカードを突きつけられてしまいます。

繰り返しますが、粉飾決算は「毒饅頭」で、犯罪行為です。
絶対にやってはいけません。

その時経営者からは「2期連続赤字になってしもて、借入できへんくなったらどうしてくれるんや!」とお叱りを受けるかもしれません。
経営者であれば、2期連続赤字の事実をまずもって受け入れることが第1ステップです。
その上で、赤字に陥った原因を明確にして、同じ轍は二度と踏まないと決意を新たにして、経営改善に、真摯に、そして怒涛の勢いで取り組むことが第2ステップです。
そして、2期連続赤字はこれっきりとして、来期こそはV字型回復を固く誓って、全社に改革を浸透させ、闘う会社の体質に変容させることが第3ステップです。

このようなステップを踏んでいることを金融機関に理解してもらえれば、金融機関としても無下な対応はしません。
担当者も自席も部店長もきっと社長の応援団になってくれること、間違いなしです。

も一回言います。
中小企業経営者の皆さん、粉飾決算は絶対にあかん、です。

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