【中小企業の銀行対策】「銀行嫌い」が経営者失格である理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、「銀行嫌い」が経営者失格である理由について考えてみることにします。

今日の論点は2点。

1 無借金が健全な企業であるとは言えない
2 正常な銀行取引が中小企業の生命線である

どうぞご一読下さい。

1 無借金が健全な企業であるとは言えない

最近ではお目にかかることがなくなりましたが、中小企業経営者で、「俺、銀行、嫌いやから」と公言する方がおられました。
もちろん、自己資金で会社が回っていくというのは、ある意味、ビジネスモデルが自社で資金を賄うことができるというわけなので、世の中の大多数の中小企業経営者からすれば羨ましい限りなのかもしれません。

他方、以前、北出にご相談された経営者の方で、「お金がキツクってね」とおっしゃるのですが、決算書を拝見すると、無借金なのです。
BSを見ると、内部留保が手厚いのですが(自己資本比率が70%超、だったと記憶しています)、資産のほとんどが固定資産で占められていて、流動資産が少額です。
お客様はしっかりしていたので売掛金と受取手形はそこそこあるのですが、現預金がカツカツです。
なるほど、これでは資金繰りがキツくって仕方がありません。

更にお聞きすると、先代の時代は地元の信金さんがメインで、運転資金も手形割引もしてもらっていたそうなのですが、以前設定されていた信金さんの根抵当権が解除されていて、信金さんは日々の入出金だけのお付き合いで、担当者もついていないという状況です。

確かに、「無借金経営」であることは間違いなのですが、現預金がカツカツでは、会社を持続的に成長させていくことは叶いませんし、経営自体、非常に不安定です。
このように、「無借金経営」が健全企業の証であるとは必ずしも言えないのです。

2 正常な銀行取引が中小企業の生命線である

無借金であるのに、資金繰りに不安があるという事態はなぜ起こるのでしょうか?
それでは、ビジネスモデル上、「必要な運転資金を調達できていない」ことに尽きます。

例えば、経常運転資金の算出の一つの考え方として、(「経常運転資金」=「売掛債権」+「棚卸資産」ー「買掛債務」)があります。
お客様からの回収に時間がかかって、製造業のように仕掛品を含めた在庫の負担があれば、自己資金では回りません。
上記の「経常運転資金」の算出式がプラスであれば、運転資金を借入なければ、現預金は減る一方です。
これでは、安定した経営の舵取りができるはずがありません。

上記のケースの社長に更にお話をうかがうと、「銀行って苦手やねん。なんや、肌に合わんというか・・・」
しかしながら、誤解を恐れずに言わせてもらうと「銀行って苦手やねん」は経営者失格です。
金融機関としっかりお付き合いするためには、決算書などの定量的要素だけではなく、経営者の力量、将来にわたるビジョンや技術力といった定性的なファクターも磨かなければなりません。
また、会社の業況を金融機関に理解してもらうためには、口頭だけでは不十分で、月次で試算表や資金繰り表を提出していくことも欠かせません。
実際、上記のケースでは、受取手形の割引から始めて金融機関との取引を正常化していったのですが、長らく真っ当な銀行取引が長らく中断していたため、金融機関としてもおっかなびっくりで、金融機関と会社との関係構築にはそれなりの時間を要しました。

とかく、コロナ禍では、コロナ資金を含めた過剰債務がクローズアップされがちですが、必要な資金を調達すべく、中小企業経営者は、債権者である金融機関への説明責任を全うしなければなりません。

中小企業経営者の皆さん、非上場の中小企業にとって、金融機関との正常な取引は会社の生命線です。
会社の持続的な成長のため、正常な銀行取引が中小企業の生命線であることを肝に銘じる必要があるのです。

 

【中小企業の銀行対策】地域特有の金融機関事情を知っておくべき理由とは?も併せてご一読下さい。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご覧下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA