【中小企業の銀行対策】費用を製造原価と販管費に分別しなければならない理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、費用を製造原価と販管費に分別しなければならない理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 現場と、現場以外の費用を分別する
2 製造原価を正しく計上して売上総利益率を把握する
どうぞ、ご一読下さい。
1 現場と、現場以外の費用を分別する
製造業や建設業の場合、「工業簿記」を利用して、費用を製造原価と販管費に分別します。
製造原価内の費用とは、工場や建設現場で使われる費用のことで、材料費、労務費(工場や建設現場で働く従業員への人件費相当分)、外注費並びに、製造ラインを動かす電気代などの現場経費を言います。
他方、販管費の費用は、工場や建設現場以外で使われる費用に当たり、もう少し具体的に言うと、事務所内にいる事務員さんや外回りの営業担当者の人件費、事務所内で使われる水道光熱費などが該当します。
例えば、燃料代の場合でも、現場で使われる配送用のトラックの燃料代や減価償却費は製造原価に、営業マンが運転する社有車の燃料費が販管費に当たります。
現場と、現場以外の費用をしっかりと分別するのが経理担当者の腕の見せ所です。
とはいえ、例えば、関西電力の電気代の明細であれば、製造原価内のものと販管費内のものと一緒に記載されている可能性がありますが、高圧電力なのか、100Vなのか、使用明細をしっかりと確認して、製造原価と販管費とのしっかりと分別する必要があります。
製造原価と販管費とを厳格に分別するべき理由は、ざっくり言ってしまえば、製造原価は、概ね変動費に該当し、販管費の多くが固定費に当たります。
変動費と販管費とを分別することによって、限界利益を算出することが容易になりますし、仮に、経営改善が必要な局面になった時にも、製造原価と販管費の削減策が立てやすくなるメリットがあります。
2 製造原価を正しく計上して売上総利益率を把握する
製造原価と販管費を適正に分別して、棚卸資産を含めて製造原価を正しく計上することによって、中小企業経営者は、自社の売上総利益率を把握することができます。
特に、円安の進行(かなり円高に戻りましたが)によって、材料費が上昇している他、賃上げの実施による労務費増加、外注先の人件費アップを反映した外注費アップと、製造原価を押し上げる要因が目白押しです。
製造原価を正しく把握することで、値上げ交渉(なかなか難しいですが)の根拠も明確になりますし、現進行年度の業績予想も見通せるようになります。
また、製造原価を正しく計上することは即ち、販管費の適正計上にも直結します。
販管費の大半を占める販管費が膨張していないかについても、同時に、検証することが可能です。
このように、製造業や建設業に於いて、製造原価を適正に算出することは極めて重要です。
中小企業経営者は、製造原価の上昇要因が多々存在することを改めて認識し、必要に応じてお客様への値上げ交渉に真摯に臨んでいく必要があるのです。