【中小企業の銀行対策】自社の月中の資金の流れを把握しておく必要性とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、自社の月中の資金の流れを把握しておく必要性について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 資金のボトムは月中にやってくる
2 月中の資金の流れを経営者自身が把握しておく
どうぞ、ご一読下さい。
1 資金のボトムは月中にやってくる
弊所では、お客様の会社の資金繰り表を日々作成していますが、月次の資金繰り表の「月末資金有高」はあくまでも月末の資金の有高を示すものです。
通常、多くの会社では、人件費(給与手当、労務費)を月中に支払っているケースが大半です。
労基法では、人件費は、締め後30日以内に支払わなければならない旨、事業者側に定めていますが、人手不足の世の中、月末締め、翌月月末のお給料支払いでは、人手の確保が難しいため、月末締切、翌月10日支払といった具合に、月中にお給料を支払っている中小企業が多いのです。
他方、お客様からの入金はというと、月末締切でお客様に請求をして、その入金は翌月月末が多くを占めます。
場合によっては、月末締切、翌々月15日に入金という具合に、平均の回収サイトが60日と、45日を上回るような回収サイトのお客様も無きにしもあらずです。
このようなことから、仮に、自社の支払条件が、人件費が月末締切翌月10日、買掛金や諸経費が月末締切、翌月月末の場合で、かつ、お客様からの入金の大半が、月末締切、翌月末入金の場合、月中に資金のボトムが毎月10日と月末前日(例えば29日)の2回到来することになります。
さらには、多くの金融機関のネットバンキングによる総合振込の資金を、所要資金を前日までに用意する必要があるケースが多いため、月末の総合振込の資金を月末の前金融機関営業日に揃えておかなければなりません。
このため、月末の総合振込に必要な資金には、お客様からの月末入金の資金を充てることができません。
仮に、月次の資金繰り表の「月末資金有高」が潤沢であったとしても、月中に資金のボトムが到来して、場合によっては資金ショートが起きないとも限らないのです。
2 月中の資金の流れを経営者自身が把握しておく
このように、試算表上の「現預金」の残高や資金繰り表の「月末資金有高」が70、80百万円と潤沢に見えても、月末の入金額が50百万円であれば、月末直近の現預金は、カツカツということが起こり得ます。
長年経理業務を預かっているベテランのお局さん的事務員さんが月末直前に四苦八苦している可能性が拭えないのです。
肝心なことは、資金のボトムが月中に到来することです。
月中の資金の流れをしっかり把握するためには、日次の資金繰り表を作成する必要があるかもしれません。
メインバンクに対して、月末の総合振込を安心して行えるよう、メインバンクに当座貸越の極度枠の設定をお願いするのも資金繰りの安定に大きく寄与します。
当座貸越(当貸)の極度枠は、枠ギリギリで張り付かないようにすることが重要なので、月末前営業日に総合振込をこなせるよう、当貸を実行してもらって、月末入金が確定する翌月月初に前月当貸実行分を完済するという柔軟な運用を図ることが重要です。
当貸の借入日数を最小限度にとどめることで、支払利息負担を軽減することが可能となります。
当貸の極度枠の設定は、メインバンク側から積極的に提案されるケースが少ないので、債務者の中小企業経営者側から、日次資金繰り表をメインバンク担当者に開示することで、当貸の極度枠を設定してもらいやすくなります。
中小企業経営者は、月末の資金有高が潤沢であることをよしとするのではなく、月中に自社の資金のボトムが到来することをしっかりと認識をし、自社の資金繰りを安定化させるため、弛まぬ努力を惜しんではならないのです。