【中小企業経営者の心得】経営者と営業担当者が簿記を身に付ける意義とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、経営者と営業担当者が簿記を身に付ける意義について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 発生主義と現金主義を理解する
2 簿記を身に付けることで試算表と資金繰り表への理解が深まる
どうぞ、ご一読下さい。
1 発生主義と現金主義を理解する
今時、中小企業の経理の実務は、ほぼ会計ソフトにて運用されています。
これは会計事務所でも同様で、会計ソフトの操作方法を理解さえしてしまえば、必ずしも、簿記の知識がなくても日常業務がこなせてしまうのが現実です。
とはいえ、簿記は人類にとって重要な発明の一つだと言われています。
かくいうわたくし北出も、学生時代一般教養で簿記を学んだ時、「これは素晴らしい仕組みやな!」と感銘を覚えた記憶があります。
簿記、正確に言えば、複式簿記のすごいところは、資産と負債の組み合わせを表した貸借対照表と、期間損益を表した損益計算書をジョイントさせたことに尽きます。
役所のように単式簿記の場合、借金で調達した借入金は「収入」に当たりますが、極端な話、「収入」を増やすためには借金をしまくればよいということにもなりかねません。
借入金で資金を調達すれば、貸借対照表の貸方の借入金が増えて、財務体質が弱くなります。
借入金の支払利息は営業外費用として費用計上されます。
単式簿記と複式簿記の違いも相当なものです。
そうは言っても、一部の経営者からは、できてきた試算表を評価できれば良いのだから、簿記の知識は必ずしも必要とはならないという声が聞こえてきそうです。
ところが、経営者には、財務体質を健全化しつつ、同時に収益力を高めるためには、簿記の知識を活用しながら、試算表を評価することが求められます。
あくまでも、複式簿記で、かつ損益は発生主義でなければなりません。
例えば、売上計上の基準としては、基本的にお客様への役務の提供が完了して初めて、売上計上ができることを理解することから始めなければなりません。
お客様との商いの契約(契約は口頭でも可)が締結され、役務が締結された時点で、請求書をお客様に交付をして、下記の仕訳を行うことができます。
(借方)売掛金10,000円/(貸方)売上高10,000円
仮にお客様からの入金が遅れてしまえば、売掛金はおカネに代わりません。
営業担当者が「これはまずい」と思い、集金に行って、領収書を引き換えに現金集金できれば、下記の仕訳が可能となり、めでたく現預金となるわけです。
(借方)現金10,000円/(貸方)売掛金10,000円
「当たり前や、そんなもん言われでもわかっとる」という声が聞こえてきそうですが、発生主義と現金主義との違いを理解するのは、簿記の仕組みを理解することが手っ取り早いのです。

2 簿記を身に付けることで試算表と資金繰り表への理解が深まる
先ほどの契約締結、役務の提供完了による売上計上、入金遅れを解消するための現金集金の流れを仕訳で、表現しましたが、例えば、このような仕訳の流れを経営者や経理担当者だけではなく、営業担当者にまで理解させることによって、それぞれの行動変容が期待されます。
営業担当者からすれば、未収入金や長期未収金の入金督促はできれば避けたい仕事にカテゴライズされがちです。
お客様とのカウンターパートの役割を果たす営業担当者は、先方のお客様のご機嫌を損ねるようなことは極力介したいというのが本音のところです。
入金の督促や現金集金は、会社からの方針を全うするため、やむなく行なっていた仕事だったのかもしれません。
他方で、一つ一つの商いのゴールは、最終的に現金化することでもあります。
最終的に現金化する必要性というのは、なかなか腹に落ちないものですが、上記の仕訳を理解すれば、早期に現金化を実現することで、営業担当者自身の昇給やボーナスの原資にもなることを理解できるはずです。
そうなると、営業担当者自身が主体的に売掛金の早期現金化への行動を起こす行動を実践するかもしれません。
一方、経営者の側からしても、損益計算書から資金繰り表を作成するのに当たって、簿記を利用して、発生主義と現金主義を正しく理解すれば、資金繰り表をよりうまく回すことができるようになり、来月、再来月、3ヶ月先、6ヶ月先に何をなすべきかがみえてくるはずです。
このように、ともすれば、経理担当者のためのように見えてしまいがちな簿記ですが、攻めの経営を実践すべき経営者や営業担当者が簿記を理解することは極めて意義深いことです。
中小企業経営者は、製造原価が発生する製造業や建設業であれば、商業簿記2級、小売業や卸売業であれば、商業簿記3級を全社を挙げて理解するよう、会社の方針を改めてみるのも面白いかもしれません。
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。
