【中小企業の銀行対策】金融機関によって借入レートに差が出る理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関によって借入レートに差が出る理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 借入レートの差は調達コストの差で決まる
2 流動性預金の平残を上げる
どうぞ、ご一読下さい。
1 借入レートの差は調達コストの差で決まる
中小企業の場合、同じ決算書、同じ試算表、同じ資金繰り表を複数の金融機関に提出していても、取引金融機関によって適用されるレートに差が出ることが少なからず起こります。
「なんで、A銀行よりB庫の方がレートが高いんやろ?」
確かに、経営者としては見逃せない重要な経営上の問題です。
そこで、経営者の頭の中に浮かんでくる疑念が、「A銀行よりB庫の方が厳しい見方をしているんと違うか」です。
長短共に、市場金利は上昇傾向です。
取引金融機関への支払利息が徐々に増えてきて、試算表の営業外費用の支払利息に経営者の視線が注がれます。
さらには、「まだまだ金利は上がるかもしれへん」という恐怖観念です。
そもそも、失われた30年間は、低レートの時代でもありました。
徐々にではありましたが、市場金利は下がり、挙げ句の果てには、マイナス金利の状況が生まれました。
金利の低下が当たり前であった中小企業経営者からすると、「金利が上がるのは痛い」というのが正直なところです。
話は戻りますが、同じ決算書、同じ試算表、同じ資金繰り表を複数の金融機関に提出していても、取引金融機関によって借入のレートに差が出ることはままあることです。
何故、金融機関によって借入レートに差が出るのでしょうか。
考えてみることにします。
金融機関は、長らく、一般の預金者からの預金を原資として、企業や一般個人に資金を貸し付けて、融資先から受け取る利息と一般預金者へ支払う利息の差額が業務粗利益としています。
借入レートは、一般預金者から受け入れている預金の構成比率に大きく関わっています。
具体的に考えます。
3メガバンクや大手金融機関は、大企業との取引が多いため、預金全体に対して、金利を支払わずに済む当座預金の比率が高いのです。
当座預金は金融機関によって資金調達コストが0円であるため、言ってしまえば、ただの資金を融資の原資に大きく充当することができます。
一方、地域金融機関の場合、企業向けの当座預金よりも、支払う預金利息が大きな(と言ってもまだまだ知れた利息ですが)個人の定期預金等固定性預金のウェイトが高いのです。
いわば、仕入れコストが大手金融機関よりも地域金融機関の方が高いので、当然、運用面での貸出金利のレートも高くなってしまいます。
ザクっと言ってしまえば、大手金融機関の方が、地域金融機関よりも貸出の適用レートは低くなって当たり前なのです。
このため、同じ決算書、同じ試算表、同じ資金繰り表を複数の金融機関に提出していても、取引金融機関によって貸出レートに差が出てくるのは必然なのです。

2 流動性預金の平残を上げる
話は少し逸れますが、金融機関の営業店(支店等)は、どこも独立採算制です。
営業計数(100円儲けるのにいくら経費がかかるか)という指標で営業店が評価されている金融機関は少なからずありますので、支店長(部店長)は中小企業の経営者のようなもので、儲けようとすれば、融資先の適用レートを上げれば良いのですが、優良先であれば、競合他行に肩代わりの憂き目にあってしまいかねません。
中小企業経営者も、金融機関営業店の部店長の立場に立ってみて、取引金融機関との適切な距離感をとることが重要です。
試算表や決算書、資金繰り表を提出することは当たり前のこととして、メイン行の適用レートをより有利にもっていくためには、金融機関にとってコストフリーの当座預金にお客様からの売掛金の入金を集中させ、総合振込、給与振込によって手数料が落ちるようにすれば、部店長、支店長はご機嫌さんです。
「他行にやられてはいけないから、今度の長期のレート、市場連動型でスプレッド50ベイシスポイントで稟議上げとけ」と支店長から担当者に指示が飛べば、中小企業経営者からすれば、ありがたいお話です。
金融機関の融資先の評価は、決算書等計数面が全てではなく、総合的に判断されることになるので、当座預金の平残(平均残高)を上げて、手数料収入が落ちるようにすることで、名実ともに、メイン行と言えることになり、安定した銀行取引への道を開くことができるのです。