【中小企業の銀行対策】経営者が今更聞けない減価償却費と銀行返済原資との関係性とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、経営者が今更聞けない減価償却費と銀行返済原資との関係性について考えます。
今日の論点は以下の2点です。
1 減価償却費はキャッシュアウトしない費用である
2 支払利息はPL、元本返済はBSの関係性を整理する
どうぞ、ご一読下さい。
1 減価償却費はキャッシュアウトしない費用である
わたくし北出が中小企業経営者を相手に、中小企業の銀行対策をしている際に、時折、経営者から質問を受けるのが「減価償却費ってようわからんから説明してくれへんか」です。
そもそも減価償却費の概念とはどのようなものか、まずは考えてみることにします。
例えば、今日5百万円の社長の業務用車をキャッシュで購入したとします。
減価償却費を計上しないまま、5年後に1百万円の下取りで売却できたとします。
この際、取得時の仕訳は、
令和7年8月25日
(借方)車両運搬具5百万円/(貸方)現金5百万円
となります。
5年後1百万円の下取りで売却できたとすると、
令和12年8月25日
(借方)固定資産売却損4百万円/(貸方)車両運搬具5百万円
(借方)現金1百万円
という仕訳になります。
つまり、減価償却費を計上しなければ、5年後にいきなり固定資産売却損という特別損失(もしくは営業外費用)が計上されることとなります。
一方、わかりやすいように、4年間で定額法で減価償却費を計上した場合、
令和8年8月25日
(借方)減価償却費1.25百万円/(貸方)車両運搬具1.25百万円
令和9年8月25日
(借方)減価償却費1.25百万円/(貸方)車両運搬具1.25百万円、
令和10年8月25日
(借方)減価償却費1.25百万円/(貸方)車両運搬具1.25百万円
令和11年8月25日
(借方)減価償却費1.25百万円/(貸方)車両運搬具1.25百万円
令和12年8月25日
(借方)現金1百万円/(貸方)固定資産売却益1百万円
となります。
つまり、車両運搬具のような固定資産は、使い続けることで価値が落ちていきます。
社長用車は、通常、社長自身が営業や現場を回るので、走行距離もまあまあ進みます。
減価償却費を計上することで、固定資産(この場合は車両運搬具)の価値の目減り分を均等に計上することによって、損益を平準化することができるのです。
また、減価償却費以外の費用は、どれも費用計上をするとキャッシュが減ります。
わかりやすく言えば、接待交際費300千円を計上すれば、現預金も300千円減少しますが、減価償却費は費用計上しても、キャッシュが減らないのです。
このように、減価償却費の最大の特徴は、いくら減価償却費として費用計上しても、キャッシュの流出が伴わないという特記すべき特徴を持っているのです。

2 支払利息はPL、元本返済はBSの関係性を整理する
減価償却費の費用としての特殊性について取り上げてみました。
なので、仮に、「赤字やから黒字にするため減価償却費を未計上にしとけば良い」というような話は、極めてナンセンスなことなのです。
収益を改善するために必要なことの一つが費用を削減して、キャッシュを増やすことが大前提です。
しかしながら、そもそもキャッシュが出ていかない減価償却費を削減しても、キャッシュは増えないのです。
給与手当、接待交際費やその他費用を削減すればキャッシュは増えますが、減価償却費は何がなんでもフル計上しなければならないのです。
減価償却費の計上不足は、金融機関の自己査定で、償却不足相当額として実態BSから査定されるので、減価償却費をフル計上しない理由は全く存在しないのです。
さらに掘り下げていくと、よく「毎月、いくらいくら銀行に返済してるんよ」とおっしゃる経営者がいますが、その場合、ほとんどの経営者が元金と利息の合計額のことを指して言っています。
そもそも支払利息は営業外費用としてPL(損益計算書)に計上するのに対して、元本返済は、負債勘定の短期借入金もしくは長期借入金が減少することを言います。
減価償却費は、つまり、元本返済の原資になるのです。
なので、簡易的な元本返済の原資を示す簡易CF(キャッシュフロー)は、「経常利益」ー「法人税等」+「減価償却費」で計算されます。
減価償却費こそが、元本返済の原資に充当できるものなのです。
中小企業経営者は、「俺は会計のこと、わからんからな」と開き直るのではなく、減価償却費について理解を深めると共に、会計に強くなって、会社の持続可能性を弛まぬ経営努力を高め続けていく必要があるのです。