【中小企業の銀行対策】意外に険しい自主廃業への道とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、意外に厳しい自主廃業への道について考えます。

今日の論点は、以下の2点です。
1 精算貸借対照表を作成してみる
2 自主廃業ではなく形式にとらわれることなく事業継続の道を探る

中小企業経営者の皆様、どうぞ、ご一読下さい。

1 精算貸借対照表を作成してみる

民間の信用調査会社の帝国データバンクの資料によると、ここ最近の倒産件数は、全国で年間ほぼ1万社前後で推移しています。
一方、自主廃業(休業を含む)は、2024年で69,019件、2025年で67,949件で、倒産件数を大幅に上回っています。

誤解のないように、しっかりと定義しておきたいのですが、倒産と廃業は天と地くらいの差があります。
倒産の現在の定義は、破産法、民事再生法、会社更生法といった倒産法制に基づいて債務整理を行うことで、破産法に基づくものは、いわゆる「自己破産」と呼ばれるもので、事業を停止して資産を資金化して、資金化した資産を原資として債権者に破産配当を支払うものをいい、倒産のほとんどは破産手続きによるものです。
民事再生法や会社更生法は、債務をカットした上で、事業を継続する倒産法制で、債権者の同意を得られるような再生計画が必要となるため、民事再生法や会社更生法は、適用件数がごくわずかにとどまります。
事業停止型にせよ、事業継続型にせよ、法的措置となった会社等を倒産としてカウントされています。

一方、自主廃業とは、会社等が自らの意思で、事業を停止することをいい、資産を資金化して負債を払い切ることが必要です。

どこの会社でも、決算書には貸借対照表が存在しますが、いくら簿価ベースで貸借対照表上で資産超過(債務超過ではない)であっても、資金化できない資産が多く存在すれば、精算貸借対照表(自主廃業を前提とした貸借対照表のこと)では、実態ベースの資産は大きく目減りします。
具体的には、資産が全て現預金であれば、すべての資産を直ちに負債の支払に充当することができます。
流動資産の中に、売掛金や受取手形が多く計上されていたら、それらを集金しなければなりませんし、受け手は手形期日まで資金化には時間がかかります。
土地や建物、精算設備等固定資産が資産の中で高いウェイトを占めていれば、それらを売却して初めて、債権者への支払に充てることができます。
いつまで経っても、土地が売却できなかったり、精算設備の売却金額が簿価を大きく下回ってしまえば、自主廃業ができなくなってしまいます。

「後継者もおらんし、わしの代で終わりや」と腹を括っている経営者は、長い時間をかけて銀行からの借入金を完済し、無借金経営を実現していて、設備投資も行わず最低限度の保守、メンテナンスを済ませたり、若手の従業員を雇用せず、創業当初から事業を支えてくれている50代や60代の古参の従業員が細々と事業を継続していたりします。

このように、自主廃業は簡単に実現できるものではないのです。

【中小企業の銀行対策】意外に険しい自主廃業への道とは?

2 自主廃業ではなく形式にとらわれることなく事業継続の道を探る

自主廃業を選択する経営者や事業主が年間7万人近く言うという事実は少々驚きですが、自主廃業を選択した経営者や事業主にとって、自主廃業を選択することは、断腸の思いだったことは想像に難くはありません。
そのほとんどは、オーナーであり、もしかすると創業者である可能性が高いので、自らの会社や事業は、自身と一体のもので、苦労と汗の結晶というべき存在だと考えられます。

だとすれば、自主廃業を選択するよりも、親族への株式譲渡、親族が難しければ番頭格の古参の従業員、それでなければ第三者に事業を譲るような選択肢も排除すべきではありません。

北出が感覚的にこれまでの経験則から言ってしまうと、番頭格の古参従業員というのは、うまく行かないケースが多いようです。
彼らは実務には長けていますが、そもそも会社や事業をやっていくという発想はほとんどないはずですし、経営者、事業主としての力量が不十分であることが多いのです。
理想は、親族、もっと言えば、直系の子息、子女への事業承継が望ましいのですが、それが叶わないのであれば、理想的な事業承継は、社長仲間への事業承継です。
これまでの取引や経験から信頼できる社長仲間は必ず存在するはずです。
「おい、お前。俺の会社、継いでくれへんか? 別に社名を変えるんやったら変えてもええけど、従業員だけは皆、変わらず使たってほしんや」と、信頼できる社長仲間であれば本音を打ち明けることができるはずです。
そう言われた信頼できる社長仲間であれば、「そうか、お前がそこまで言うんやったら、悩んで悩み抜いた末のことやろうから、前向きに考えるようにするからな」といってくれるはずです。

自主廃業であれば、債権者への負債の弁済は大前提となるため、仕入先や外注業者といった債権者に迷惑をかけることはありませんが、現に従業員がいて、取引先もバッチリある既存の事業なのですから、あっさり自主廃業するのは、オーナーや経営者のわがままに他なりませんし、社会的に大きな損失です。

意外に厳しい自主廃業への道もあるけれど、後継者難に悩む中小企業経営者は、形式にこだわることなく、事業を継続していけるような方策を検討すべきなのです。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA