【中小企業経営者の心得】自主廃業を回避すべき理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、自主廃業を回避すべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 精算貸借対照表上の資産の金額は簿価よりも大きく下回る
2 自主廃業はオーナー経営者の身勝手である
どうぞ、ご一読下さい。
1 精算貸借対照表上の資産の金額は簿価よりも大きく下回る
我が国では、高齢化の問題が日々提起されていますが、中小企業経営者、小規模事業者事業主の高齢化はもっと深刻です。
バブルの頃、30歳で会社を辞めて独立して、会社を大きくしてきたオーナー社長も、60代後半から70歳に到達しています。
多くの中小企業経営者は、サラリーマンと違って見た目が若く、「まだまだ若い奴には負けてられへん」と事業継続に意欲的です。
オーナー社長であれば、会社は自身の分身のような存在なので、そう簡単に舞台から降りるわけにはいかないというのも事実です。
とはいえ、徐々に体力に衰えが見えてきて、「おや、ちょっとおかしいぞ」と体調に不安を感じてきている中小企業経営者も少なくないのかもしれません。
一方で、60代後半や70歳になったオーナー社長の中には、「俺の代で、この会社は終わり。無借金やし、いつでも会社をたためるような準備はしてあるし」という方がいらっしゃるかもしれません。
このように、いわゆる自主廃業は近年増加傾向が強まっています。
帝国データバンクによれば、2025年の倒産件数が1万社強であるのに対して、個人事業主を含めた旧廃業は6万7千社にのぼるとのことです。
そもそも倒産と自主廃業とは何が違うのでしょうか。
一言で言ってしまえば、倒産は外圧がかかって会社が死んでしまうことで、自主廃業とは、オーナー経営者が自らの都合で会社をたたんでしまうということです。
原材料高で赤字体質に陥って資金繰りがつかなくなったり、当てにしていた銀行融資が謝絶されて資金ショートしてしまうことによって、倒産に追い込まれるのが倒産です。
自主廃業は、経営者が自らの意思で会社をたたむわけなのですが、実は自主廃業とはそう簡単なことではないのです。
具体的に申しますと、決算書上では資産超過(債務超過ではない状態。「資産」>「負債」)であったとしても、自主廃業となれば、貸借対照表を精算貸借対照表に引き直さねばなりません。
自主廃業は、資産を換金して、負債を払い切って、残ったお金を株主に配当として分配して会社を清算することですが、例えば、土地や建物が、簿価通りの金額で売却できる保証は何もありません。
売掛金の中でも、不良化していて、現金化できないものがあるかもしれません。
社長向けの貸付金、立替金、仮払金等が計上されていて、社長から資金を回収できなければ、不良資産となってしまいます。
このため、いざ、自主廃業するとなっても、資産を全額換金できず、負債を払いきれないとなれば、破産による自己破産や特別清算という法的措置に踏み切らざるを得なくなります。
ましてや、金融機関からの借入金が多くて、資産を換金しても借入金を返済しきれなかったら、自主廃業は選択できません。
このように、自主廃業はそんなに簡単なものではないというのが実態なのです。

2 自主廃業はオーナー経営者の身勝手である
そんな自主廃業ですが、中小企業経営者、小規模事業者事業主の中には、自らのハッピーリタイアのタイミングを決めて、自主廃業への準備を進めているかもしれません。
実際、例えば、町工場の場合、従業員が数名で、皆50歳以上、原材料はお客様の会社から無償支給を受けていて加工賃をもらっていて、格別の設備投資を行なっていなければ、資金需要も乏しく、無借金経営を貫いている事業主がいるかもしれません。
確かに、円満に自主廃業する、ハッピーリタイアするというのは一つの経営者の考え方ではあるかとは思います。
しかしながら、現に、いくら中高年ばかりとはいえ、従業員がいて、取引先もあるわけなので、経営者、事業主の都合で、「来年いっぱいで会社をたたみます」というのは、経営者、事業主という社会的責任を放棄していると言われても仕方がないと北出は勝手に思っています。
もしも身内に事業承継者がおらず、ハッピーリタイアをしたいというのであれば、然るべき方に事業承継して、事業を継続するという選択肢を排除すべきではありません。
例えば、信頼できる社長仲間がいて、「おい、お前、俺の会社、買おてくれへんか」と仲間内M&Aを検討してみるのも悪くはありません。
信頼できる社長仲間がいなければ、今時、金融機関も積極的にM&Aに注力しているため、従前からのメインバンクの支店長に相談してみるというのも考えてみるべきです。
金融機関がダメならば、日本M&Aセンターをはじめとしたいわゆる「ブティック」さんもたくさん存在するので、然るべき買主さんを探してもらっても良いかもしれません。
株主譲渡で、信頼に足る第三者に事業をお任せして、税金を払って手元に残った1億50百万円でニュージーランドでのんびりセカンドライフを満喫するということも非現実的なことではありません。
それにしても、休廃業で、年間7万社近くの会社や事業所が消滅しているというのは衝撃的です。
中小企業経営者は、いざという時のためにも、常日頃から財務体質の健全化に注力しておく必要があるのです。

