【中小企業経営者の心得】会社の身の丈にあった賃上げを実現していくために必要なこととは?
今日は、中小企業経営者の心得として、会社の身の丈にあった賃上げを実現していくために必要なことについて掘り下げていきます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 生産性アップなき賃上げは非現実的である
2 ミスの根絶と無料のDXツールの活用が現実的である
どうぞ、ご一読下さい。
1 生産性アップなき賃上げは非現実的である
1月6日の仕事初めから今日が4日目。
少なからぬ中小企業経営者が、商工会議所や業界団体が主催する賀詞行事に参加されたことかと存じます。
中小企業経営者も立派な経営者なので、社内だけではなく、社外に対しても、積極的に自社のことを発信していくことは重要なことなので、外部の賀詞行事に参加し、他業種、他業態の経営者と意見交換する場は大切な機会です。
弊所のお客様の中小企業経営者の皆様には、年始の賀詞行事には積極的に参加されることを推奨しています。
賀詞行事の中で、話題になったトピックスは多様であったことでしょうが、製造業であればトランプ政権Ver.2.0が及ぼす影響に関心が寄せられたでしょうし、業種業態を問わずでいえば、賃上げに関することが多くの中小企業経営者の関心事であったことは容易に想像することができます。
確かに、昨年は、長らく続いてきたデフレ基調からインフレ局面の大きな転換がありました。
大手企業労組は春闘で軒並み大幅な賃上げを経営側から勝ち取りました。
大きなインパクトがあったことは間違いありません。
翻って、中小企業経営者からすれば、人手の確保のため賃上げに踏み切ったという側面が強かったように北出は感じています。
賃上げをしないと優秀な人材が他社へ流出してしまうのではないかという強迫観念が中小企業経営者を賃上げに駆り立てたように思えてなりません。
そもそも論として、特に中小製造業は自社製品を持たず、「親会社」の下請けが大半です。
さらに、原材料単価の上昇や、水道光熱費等諸経費増によって、労務費、人件費を引き上げる原資がほとんどないというのが中小企業の現実です。
このため、特に、今年以降、継続的に中小企業が賃上げを行っていくために避けて通れないのが、生産性の向上です。
「生産性アップなくして、賃上げなし」というのが中小企業の現実なのです。
このため、経営者だけではなく、労働側にも生産性アップへの意識を飛躍的に高めることが必要不可欠です。
そこには、労使共に利害が一致するはずなので、労使が協調して、生産性アップへの取り組みを強化することが賃上げ実現への条件になるといっても過言ではないのです。
生産性アップなき賃上げは非現実的で、継続性を保つことはできないのです。
2 ミスの根絶と無料のDXツールの活用が現実的である
次に、生産性アップをどのように現実的に実現していくのか、ベタなところで考えます。
教科書的にいえば、「下請けからに脱却」みたいな話になってしまいがちですが、創業以来、親会社の下請けとして稼働してきた町工場がいきなり新興国向けに輸出できるような自社製品を産み出すようなことは簡単にはできません。
もちろん、それができればそれに越したことはないのですが、まずはできるところから。
生産性を阻害する大きなファクターとして、ミスへの対応が挙げられます。
製造業であれば、不適合品が出てしまって、出荷した部品を一旦全て回収して、原因を解明して、今後の改善策を親会社に報告するというような「後ろ向きの仕事」が、生産性を大きく引き下げています。
あるいは、データ入力が手打ちであるためミスが出てしまう上、その場での現場責任者による「検印」等も行われていないため、「あれれ、こりゃおかしいぞ」となった時、発生したミスを遡求する作業が日常業務を止めてしまいます。
このため、一手間のように見えるのですが、金融機関営業店のように、一枚一枚の伝票について、起票者が起票、入力したものを、現場責任者がその場で検印することでミス発生時点でミスを潰すような業務フローに切り替えるというのは一つの改善策になります。
加えて、ChatGPTに代表されるDXツールを積極的に活用することも必要です。
これまで社内の業務系ソフトを作ってくれていた地元のシステム屋さんに頼むとまあまあの金額になったりしますが、幸いにも、多くのDXツールが無料、もしくはごく低価格でサブスク利用できるので、想像以上の低コストでDXツールを日常業務に取り込むことが可能です。
業務フローの見直しによるミスを根絶することと、無料もしくは低価格サブスクのDXツールを積極活用することによって、地味ではありますが、ほとんどコストをかけることなく、生産性アップを実現する可能性が高まります。
このような地味な取り組みを積み重ねることによって、これまで漫然と続けてきたルーティンワークにも、「もっと、使いやすくできないか?」とか、「これこうやったら楽にやれますよ」といった具合に、改善へのPDCAサイクルが徐々に回っていきます。
単純作業の現場であっても、個々の現場作業者に、今行なっている業務の意味合いを理解させることで、働いている意義を少しずつ認識できるようになり、「食うために働く」というフェーズから脱却していける効果も期待できます。
地味なことの積み重ねによって、生産性向上が実現できた分については、経営側は労働側にしっかりと賃上げという形で還元すべきです。
実際、仮に経営改善局面にある中小企業であっても、取引金融機関に対して、生産性アップへの取り組みを行なっていて、その果実を極力賃上げ原資として従業員に還元することをしっかりと伝えていけば、取引金融機関もそれに異を唱えることはありません。
コストカット一辺倒を融資先に求めてきた金融機関の姿勢も大きく変化しています。
中小企業経営者は、ミスを根絶することと、低コストのDXツールを積極的に活用することによる生産性アップに今すぐ取り組む必要があるのです。