【中小企業の銀行対策】政府系金融機関とメインバンクとの理想的な距離感とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、政府系金融機関とメインバンクとの理想的な距離感について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 政府系金融機関を知る
2 政府系金融機関とメインバンクとの理想的な棲み分け方
どうぞ、ご一読下さい。
1 政府系金融機関を知る
中小企業・小規模事業者にとって、資金調達に欠かせないのが政府系金融機関です。
中小企業・小規模事業者の経営者からすれば、身近な存在であるのが日本政策金融公庫で、旧日本生活金融公庫(現国民生活事業)、旧中小企業金融公庫(現中小企業事業)並びに農林漁業金融公庫が合併してできたものです。
大都市部から地方都市に至るまで、全国に支店が存在します。
中小企業や小規模事業者の事業資金や一般個人向けの教育ローンを取り扱っているのが国民生活事業で、多くの中小企業・小規模事業者が取引しているのが、国民生活事業です。
中小企業や中堅企業の主に設備資金を供給するのが中小企業事業で、国民生活事業と中小企業事業は同じ支店の建物の中に同居しますが、国民生活事業と中小企業事業とは、いわばウォールが立っているような状況で、融資先の情報共有はなされていないようです。
日本政策金融公庫は融資を専業としていて、預金業務は行なっていません。
「政府系金融機関なら安心だから預金をしたい」と言っても、日本政策金融公庫に預金を預入することはできません。
中小企業にとって身近な政府系金融機関として挙げられるのが、商工組合中央金庫(商工中金)です。
商工中金も全国展開の金融機関で、全国の主要な都市に支店が展開されています。
商工中金は、預金も取り扱っていますが、商工中金の支店内のATMがセブン銀行のATMに入れ替わっています。
商工中金は独自の制度融資があって、たとえば運送業者向けの車両購入にかかる低利の設備資金の制度があったり、新型コロナウイルス感染拡大時期に商工中金独自のコロナ資金の融資を受けた中小企業も多くありました。
日本政策金融公庫も、商工組合中央金庫も、中小企業にとっては心強いパートナーと言えます。
2 政府系金融機関とメインバンクとの理想的な棲み分け方
そんな政府系金融機関ですが、真面目で義理堅い中小企業経営者の頭の中にふと疑問がよぎります。
「政府系で借りたら、いつも世話になってるメインバンクの担当が気分を害するかもしれない・・・どうしよ?」
確かに、創業以来、運転資金も設備資金もお世話になっているメインバンクの担当者の気分を害することは芳しいことではありません。
しかしながら、新規融資を競合する民間金融機関から受ける場合ならとにかく、政府系金融機関から資金調達する分には、メインバンク担当者の顔に泥を塗ることにはなりません。
政府系金融機関からの融資は、ほとんどのケースで固定金利であって、かつ、民間金融機関が出せないような低レートでの対応で、かつ、日本政策金融公庫国民生活事業からの融資は大した金額にもならないので、民間金融機関と政府系金融機関とは暗黙のうちに棲み分けができているのです。
ただし、政府系金融機関から資金調達する際には、メインバンク担当者に事前に「今度、公庫から安い制度融資があるので、それで10百万円借り入れるつもりなんよ」と一言耳打ちしておけば、後々「なんで当行に事前に相談してくれなかったんですか?」とメインバンク担当者から言われることもありません。
このように、メインバンクを資金調達の柱としてしっかりと関係構築しながら、政府系金融機関から適宜リーズナブルな制度融資を活用するような距離感を取ることが、政府系金融機関とメインバンクとの理想的な距離感なのです。