【中小企業経営者の心得】中小企業の取引に10対0はあり得ない理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、中小企業の取引10対0があり得ない理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 中小企業の10対0は追突された事故しかない
2 主張すべきは主張して譲るべきところは譲る
どうぞ、ご一読下さい。
1 中小企業の10対0は追突された事故しかない
誤解を恐れずに言えば、中小企業は取引上の力関係から、相対的に弱い立場に立たされることが大半です。
よって、お客様からの売掛金の回収サイトの方が、仕入先への買掛金の支払サイトより長くなりがちです。
このため、増収局面では、「売掛金残高」>「買掛金残高」となってしまって、資金繰りの圧迫要因となってしまい、世の中では黒字倒産というものが起こってしまいます。
増加運転資金というのは極めて重要で、経営者とすれば、増収局面では試算表上のPLでは黒字が出ていて、「ええぞ! もっともっと、イケイケや!」となるわけですが、実は資金繰り的にはキツくなってしまいます。
売掛金の回収サイトと買掛金の支払サイトを加味しながら、資金繰り表で未来のキャッシュの推移を見極めないと、成長局面にある会社が突然死してしまいかねないのです。
このように、中小企業は残念ながら、取引の力関係上決して有利とは言えません。
自動車事故で言えば、停車中に後ろからオカマを掘られるような10対0の事故のような取引でない限り、中小企業の取引では、10対0は残念ながらあり得ないのです。

2 主張すべきは主張して譲るべきところは譲る
実際、街工場のお客様の経営者と同業他社の社長との商談を聞いていると、「おい、ここ、もう少しまからへんのか?」、「いや、もう一杯一杯やで」、「もー、しゃあないな。このくらいでいっとこか」という具合で、原価計算とかどうなっているのかを甚だ心配になるのですが、後で原価計算をしてみると、大儲けではないけれど、一応利益は出ていて、相手側にも損はさせていないというのが見て取れるというケースが見受けられるのです。
損して得取るどころか、小さな利益を双方がシェアしていて、それが自然にできているところが、さすがの現場感だと感心させられます。
トランプ関税の石破総理の意向ではないけれど、主張すべきは主張して、譲るところは譲るというのが、まさに、中小企業相互の取引の真髄ではないかと考えるのです。
決して、相手を潰すことなく、10対0ではなく、限りなく51対49を目指すというのが現実的で、相手を怒らせない取引なのかもしれないと思ってしまいます。
10対0を目指さないのは、取引金融機関との間でも同様です。
金融機関担当者や役席者、支店長等の部店長はサラリーマンですから、彼らの立場を斟酌してあげる必要があります。
中小企業経営者は、決して相手のメンツを潰すのではなく、10対0でもなく、限りなく51対49で、51を取りに行くという姿勢をとってみてはいかがでしょう。