【中小企業の銀行対策】中小企業経営者が知ってそうで知らない「期限の利益」の意味とは?
今日は、中小企業経営者が知ってそうで知らない「期限の利益」の意味について考えてみることにします。
今日の論点は以下の2点。
1 期限までは返さなくても良いということ
2 期限の利益喪失後にやってくるもの
どうぞご一読下さい
1 期限までは返さなくても良いということ
金融機関から融資を受けている中小企業経営者にとって、気になるのが「返済日」です。
長期で資金調達すると、通常毎月返済をしていかなければなりません。
毎月何日が返済日で、返済額は元本いくらでなので、毎月の返済に備えるために、経常利益と減価償却の合計額が元本返済額を上回ることを一つのベンチマークにしている中小企業経営者も少なくないと思われます。
ここで重要なのが、「返済日」です。
返済日には返済しなければならないのですが、逆に言えば、返済日までは返さなくても良いということです。
この返済日までは返済しなくても良いということが「期限の利益」と呼ばれるものです。
こんな話があります。
連れからおカネを借りた時、「いつ返済すればいい?」と連れに聞いた時に、「いつでもええよ」という答えが返ってきたらそれはそれで要注意です。
「いつでもええよ」は、逆に言えば、「いつでも返せって言える」ということです。
言い換えると、「いつでもええよ」は期限の利益がない、ということです。
ある日突然、連れから、「あの借金やけど、悪いけど、今日返してくれ」と言われても借りた側は明確に拒むことができません。
なんだか、かつてやってた土曜のお昼のNHKの某番組みたいになってしまいましたが、とにもかくにも、返済日をきっちり決めておけば、それまでは返さなくても良い、期限の利益があるということは借金をする上で、債務者保護という観点からも極めて重要なことなのです。
みなさん、期限の利益についてご理解頂けましたでしょうか?
2 期限の利益喪失後にやってくるもの
期限の利益があるから、うちの会社は安泰だ!と喜ぶ前に、注意すべきことが、金融機関は金銭消費貸借契約書の中で、期限の利益の喪失事項を明文化しています。
主なものとしては、
1 支払不能になった時、不渡を出した時
2 破産手続や民事再生手続といった法的措置となった場合
3 債務者が解散したり大幅な組織改変を行なった時
4 金融機関の預金が差押えられたりした時
5 行方不明となった場合
6 返済が遅延(延滞)した場合
が挙げられます。
いずれもそりゃそうやなと納得できることばかりです。
特に、気をつけなればならないのが4の預金の差押です。
預金の差押が懸念されるのが、租税公課の対応です。
税務署や社会保険事務所によって、滞納処分として預金が差押えられたら、一発アウトです。
なので、租税公課の滞納は経営者として何がなんでも避けなければなりません。
期限の利益喪失の事態となった時にどのようなことが起こるのでしょう?
具体的には、期限の利益がなくなってしまうので、残っている借入金が一括返済となってしまいます。
一括返済となってしまうと、例えば、これまで経営改善を一生懸命進めてきても、その努力は一撃で泡と消えてしまいます。
信用保証協会の保証付部分は、代位弁済となりますし、担保物件は競売へと手続きが進められます。
このように、期限の利益を喪失してしまうと、事実上、事業の存続は極めて難しくなってしまいます。
中小企業経営者は、期限の利益のメリットと期限の利益喪失の抱えるリスクについて正しく理解し、事業を健全に営んでいく弛まぬ努力が必要なのです。