【中小企業の銀行対策】税金を滞納する前に銀行返済を止めなければならない理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、税金を滞納する前に銀行返済を止めなければならない理由について考えてみます。
今日の論点は以下の2点です。
この2点を掘り下げます。
1 租税公課は優先債権である
北出にご相談を頂くケースの中で、「惜しいなあ」と思うケースが、銀行返済が正常なのに、税金や社会保険料といった租税公課に滞納が発生している時です。
北出は「社長、銀行返済よりも租税効果を先に払わないとあきません。なんというても、あっちは国家権力ですから」と申し上げるのですが、実際、租税公課は、国税徴収法とそれを準じる形で滞納処分ができるので、金融機関に勝ち目はありません。
実際、消費税の場合、決算の後2ヶ月後に確定分、その後年1回、もしくは3回の中間分が課税され、追っかけてきます。
社会保険料も毎月通常発生分が出てきます。
一発、滞納してしまうと、通常発生分に加えて、滞納分を納付していかなければなりませんので、資金繰り的には極めて厳しくなってしまいます。
政府系金融機関やこれまで未取引であった金融機関から融資を受ける際には、納税証明書を求められるケースが多いため、融資の内諾を頂いても、租税公課の滞納があれば、速やかに滞納分を納付するか、納付できなければ、「すんません、今回は無かったことに・・・」となんとも悲しいオチになってしまいます。
全ての中小企業経営者に大声で言いたい。
「租税公課は何がなんでも払わんといけません!」
納税の義務は、なんといっても、日本国憲法にしっかりと謳われています。
租税公課の滞納は、大風呂敷に言うてしまうと、憲法違反でもあるのです。
2 妙な見栄は捨てる
そんな重要な租税公課であるにもかかわらず、なぜ、資金繰りが厳しくなると租税効果を滞納してしまうのでしょうか。
その答えは、おそらく税務署や社会保険事務所とは常日頃からお付き合いがなく、直接商売に関係しないことにあると北出は考えています。
仕入先や諸経費支払先に「ちょっと支払、待ってもらえないでしょうか・・・」と切り出すのは勇気が要ります。
特に、仕入先の場合、「あの会社、支払いジャンプしてきた。もう長ないから、これ以上掛売りはやばいからキャッシュオンにせなあかんな」と言う具合に、あっという間に業界内で信用不安が広がってしまいます。
そもそも、「ちょっと支払、待ってもらえないでしょうか・・・」の時点で、納品してもらえなくなる可能性もあり得ます。
事業を継続していく中で、仕入先への支払遅延は危険です。
他方、金融機関の場合は少し事情が異なります。
「向こう1年間、元本返済を猶予して下さい」とはみっともなくて言えないと考えている中小企業経営者がいるかもしれませんが、金融機関に対してそのような見栄を張る必要は全くありません。
中小企業金融円滑化法以降、金融庁や財務省地方財務局から「融資先からの条件変更の要請には柔軟に対応するように」と行政指導がされているので、金融機関側から「それは困ります」とは言えません。
むしろ、常日頃からメインバンクとの信頼関係がしっかりと築けていれば、メインバンクのまともな担当者は、「社長、税金が滞納になる前に、返済止めましょう。うちがメインなので、他行さんにも協調してもらえるよう、こちらから声かけてみますね」といってくれるはずです。
税金の滞納が大きくなって銀行預金が税務署や社会保険事務所から差押られてしまうと、期限の利益(返済日までは返済する必要がないこと)の喪失事項に一発で抵触するので、既往借入金は全額一括返済となってしまいますので、事実上事業継続が難しくなってしまいます。
「税金も大事ですが、うちへの返済はきっちりやってもらわないと困ります」などと抜かすアホな銀行員がいたら、そんな銀行との取引は即刻中止するしかありません(既往の借入金があるので、そうはいかないのですが・・・)。
このように、「税金が厳しいな」と資金繰りが厳しくなった時には、躊躇なくメインバンクに元本返済の条件変更を要請するようにして下さい。
支払の優先順位を変えましょう。
くどいですが、もう一度言います。
「銀行に対するくだらない見栄は捨てるようにしましょう」
資金繰りに不安を覚える中小企業経営者の皆様、その際には、一言、北出までお声がけ頂ければ幸いです。