【中小企業の銀行取引】取引金融機関をやたらと増やしてはいけない理由とは?

1 今日は、中小企業の銀行取引として、取引金融機関をやたらと増やしてはいけない理由について考えます。

今日の論点は以下の2点です。

1 取引金融機関を機能別に役割分担させる
2 メインバンク不在は会社の危機である

どうぞ、ご一読下さい。

1 取引金融機関を機能別に役割分担させる

まだお付き合いの浅い中小企業経営者からふと聞かれる質問として、「どの銀行がお勧めなんや?」があります。
これは意外と、よく尋ねられるお話ですが、おそらく、中小企業経営者からすると、自社がお付き合いしている金融機関以外との比較対象がないため、このような質問が出てくるのだと北出は考えています。

で、この質問の答えはなかなか難しくて、一言目には、「一概には言えない」ということと、「社長の肌に合う金融機関とお付き合いするといいです」と答えるようにしています。
社長の肌に合うというのは、例えば、一例ですが、民間の銀行は概ね資本の色がついています。
例えば、A銀行は住友の色がある、とか、B銀行はりそなと親密だ、とか、そういう謂わば親元の血筋というのは一つの判断材料といえます。
資本的な色がついていると、その親元の肌感覚が地方銀行にも大なり小なり及んでいるので、オーナー経営者自身のキャラクターに近いと思える金融機関とお付き合いをするというのは合理的です。

話を少し変えて、中小企業といっても、年商が5億円規模とかになると、実務的に一行取引というわけにはいかなくなり、複数行との取引が発生してきます。
年商5億円規模となると、金融機関としても、新規融資見込先として帝国データバンクや東京商工リサーチの企業概要データの中でも目にとまる存在となってくるので、金融機関側からの新規融資のオファが出てきます。

取引金融機関が複数行となった際に、重要な要素として、取引金融機関を機能別に使い分けるということが重要になってきます。
昭和の銀行規制時代には、外国為替は旧東京銀行、超長期の資金は興銀、長銀、日債銀だけなどという線引きがありましたが、金融機関の業務自由化が進んだ今では、金融機関毎に、機能別のぶっちぎりな差があるわけではありません。

しかしながら、例えば、中小企業でも中国からの輸入決済は3メガバンクのいずれかが望ましいですし、地域密着型のビジネスモデルでしたら地元の信用金庫で総合振込を行うなど、金融機関毎の強みを把握して、機能別に役割分担をさせることが妥当です。
機能別に金融機関を使い分けていると、自ずとメインバンクはX銀行、サブがY銀行、サブサブがZ信用金庫のような序列が暗黙のうちに生まれてくるはずです。
このように、金融機関毎の強みを把握した上で、機能別に役割分担させるようにするのは、中小企業の財務戦略として重要なことなのです。

2 メインバンク不在は会社の危機である

次に、メインバンク不在は会社の危機であるということについて話を進めていきます。
北出が経験則上、銀行取引がうまくいっていないと直感するケースが、会社の事業規模に対して、どう見ても取引金融機関の数が多過ぎる場合です。
決算書の勘定科目明細を拝見すると、年商5億円なのに、政府系を含めると8行も9行も取引金融機関があって融資を受けているのが典型例です。

そのような状態が起こる背景として、特に、金融機関が多数乱立する大阪のような都市部では、新規融資の熾烈な獲得競争が挙げられます。
もう少しわかりやすく言いますと、銀行の売り込みによって新規融資を長期資金で調達すると、以降、多忙な銀行担当者は年1回決算書を徴求するためだけに訪問するようになります。
一方で、資金需要が旺盛な会社は、別の未取引の銀行から新規融資の売り込みを受けて長期資金を調達する、これを繰り返していくと、取引金融機関の数が増えて、個別の各行からは長期資金の証貸1本だけということが起こってしまいます。
このようにして、取引金融機関過多で、メイン行不在という会社としては危機的な状況が生まれてしまいます。

もちろん、会社は成長スピードに合わせて、機能別に優れた金融機関からの融資取引を増やして、メインバンクが変遷していくのは当然のことです。
しかしながら、取引金融機関過多で、メイン行不在という状況は経営者として失格です。
取引金融機関を機能別に役割分担をさせ、暗黙のうちに、メイン行、サブ行、サブサブ行の序列をつけて、融資、預金両方の取引をコントロールすることが肝要です。
乱暴に言ってしまうと、例えば、年商5億円の中小企業であれば、政府系を含めて取引金融機関は4行以内というのが妥当なところだと考えます。

中小企業経営者の皆さん、自社の取引金融機関は機能別に役割分担ができていますか?
暗黙のうちに、メイン行、サブ行、サブサブ行の序列がついていますか?
非上場の中小企業にとっては、銀行取引は経営の中枢です。
銀行取引を経理任せにするのではなく、試算表や資金繰り表を作成して、定期的に取引金融機関の序列を押さえながら実りある銀行取引を実現していくことが経営者の責務なのです。

 

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公式サイト「次世代に残せる老舗企業の創造」もご覧下さい。

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