【中小企業の銀行対策】金融機関のバブル入行組の役職定年到来がもたらすものとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関のバブル組の役職定年到来がもたらすものについて考えてみます。
今日の論点は以下の2点。
1 バブル大量入行組が大量に役職定年を迎える
2 ベテラン融資役席の引退が経営改善局面の中小企業にネガティブに働く
どうぞご一読下さい。
1 バブル大量入行組が大量に役職定年を迎える
上場金融機関(持株会社上場の場合を含む)の定時株主総会が終わり、多くの金融機関で7月1日付で幹部人事異動の発令がされました。
人事異動は栄転があり、左遷もありで、悲喜交々ですが、多くの金融機関では、55歳で「役職定年」が到来します。
「役職定年」とは、中小企業経営者にとっては少し馴染みが薄い言葉かもしれませんが、部店長(支店長、支社長、法人営業部長とかですね)、次席(次長、副支店長)、営業店の課長、支店長代理といった役席が、55歳を迎えるタイミングで、役員待遇(実質的には執行役員以上)になれない限り、役職を取り上げられてしまう人事制度のことを言います。
浪人や留年をすることなくストレートで大学を出て、55歳を迎える金融機関役職員の入行年次は、通常であれば、平成3年です。
平成3年、1991年といえば、野村證券での損失補填問題が顕在化した証券不祥事や、湾岸戦争があった時で、世の中はバブルの最終盤というところです。
金融機関としては、今から考えると、まだまだノー天気なもので「まだまだいける!」という強気な経営方針から学生を大量採用していました。
バブル入行組の金融機関役職員からすると、その後にやってきた金融危機は「まさか! こんなはずでは?」の世界だったことは容易に想像されます。
今年、令和5年、2023年は、このバブル入行組が大量に役職定年を迎えるタイミングなのです。
実際、北出もお客様の社長と共に、金融機関を毎月訪問していますが、7月1日を挟んで、「いや、わたし、今年55歳になりますので、担当が変わります・・・」という挨拶に多数直面しましたので、バブル入行組が大量に役職定年を迎えていることを肌で実感しています。
今年度に役職定年を迎えたり、まもなく役職定年に差し掛かる金融機関役職員の数は相当なものです。
他方、バブル崩壊後、金融機関はどこも新規採用を大幅に抑制した結果、現在30代で、「就職氷河期」に就活していた世代の役職員の人数は少なく、「金融機関役職員人口ピラミッド」は相当に捻じ曲がっています。
金融機関にとっては、現在30代の「就職氷河期」世代の役職員を目利きの効く立派な融資マンに育成していくことが大きな課題と言えます。
これらを踏まえて、バブル入行組が大量に役職定年を迎えることが、金融機関から融資を受けている中小企業にとってはどのような影響が及ぶのでしょうか?
チャプターを改めて考えてみることにします。
2 ベテラン融資役席の引退が経営改善局面の中小企業にネガティブに働く
次に、経営改善局面の中小企業にとって、バブル入行組が大量に役職定年を迎えることによる影響について考えてみます。
営業店での大口融資先ではない中小企業にとっては、こういってはなんですが、部店長や次席が交代してもその影響は限定的です。
特に、コロナ資金を多額調達したり、コロナ特例リスケ、収益力改善計画等で経営改善局面にある中小企業にとっては、営業店のベテラン融資課長や支店長代理で筆頭役席が役職定年を迎える方がより大きな影響があります。
部店長や次席になれないまま役職定年を迎える融資畑のベテラン課長や筆頭役席は、中小企業活性化協議会との調整に慣れていたり、北出との阿吽の呼吸でメイン行として下位行の調整に当たってくれています。
しかしながら、そのようなベテラン課長や役席が役職定年を迎えたこのタイミングで、見た目、30代位で「あんまり貸付のことわからないんですよね〜」的で、空気みたいな後任の方が現れてしまうと「ほんま、こいつ大丈夫かいな!???」と北出は思わず目眩を感じつつ、吐き気を催してしまいます。
残念ながら、ベテラン融資役席の引退が経営改善局面の中小企業にネガティブに働くことは避けられそうにありません。
中小企業経営者は、未だ経験の浅い中堅融資役席に「ふざけんな、お前」なんて、何が起こってもキレてはいけません。
中小企業経営者たる者、ここは冷静にグッと堪えながら、会社のこと、業界、業態特有の商慣習などを丁寧に教えてあげるような気持ちで接していく姿勢が必要なのです。