【中小企業の銀行対策】リスケに際して「債権者平等の原則」を念頭におかねばならない理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、コロナの特例リスケ、収益力改善計画や、一般的な条件変更(リスケジュール)に際して、経営者が「債権者平等の原則」を念頭におかねばならない理由について考えます。

今日の論点は以下の2点。

1 「B行は返済してその他は止める」は許されない
2 債権者平等の原則を貫いて全ての取引金融機関に協調してもらう

どうぞご一読下さい。

1 「B行は返済してその他は止める」は許されない

新型コロナウイルス感染拡大から3年以上が経過し、アフターコロナで日常が戻ってきたと報道されています。
しかしながら、飲食業や旅館業といった中小サービス業にとっては、コロナの影響は甚大で、未だ資金的な本格回復には道半ばであることは残念なことです。
このため、中小零細ではない中小、中堅企業では、コロナ資金を調達するだけ調達して、それでも回らずに、コロナ特例リスケや収益力改善計画の下で、元本返済を止めるなどの条件変更を金融機関にお願いして事業継続している会社は少なくありません。

そんな中、条件変更中の経営者がよくおっしゃられるのが、「X行は借入残高が少ないし、いっそ返してしまったらメインや他の銀行との交渉がスムースにいくのでは」というご指摘です。
確かに、気持ちはわからないでもありませんが、なかなかそういうわけにはいきません。
債権者への弁済に際して、特定の金融機関にだけ借入を返済するというのは余程の事情がない限り、債権者平等の原則が許しません。

民事再生のような事業継続型の法的整理の場合、少額債権者には優先的に弁済するケースはまま見られますが、ここでいう少額債権者は、商取引上の一般債権者で債権額も数十万円と文字通り少額なので、金融機関相手とは少し事情が異なります。

もちろん、取引金融機関それぞれに保全(担保や保証)の状況が異なるために、金融機関の利害も必ずしも一致しませんが、基本的には、債権者平等の原則の下、元本返済を止めるのであれば全行止める、返済額はプロラタ(優先弁済を除いた借入債務の残高按分)で決するというのが一般的です。

ちなみにプロラタとは、例として、借入金残高がA行300百万円、B行150百万円、C行50百万円、合計500百万円の場合、借入(融資)シェアがA行60%、B行30%、C行10%となります。
その際、返済額総額を月額1,000千円とする場合、返済額はA行600千円、B行300千円、C行100千円、合計1,000千円とするのがプロラタの考え方です。
「プロラタ」、ぜひ覚えてください。

2 債権者平等の原則を貫いて全ての取引金融機関に協調してもらう

条件変更(リスケジュール)を金融機関に要請する際に、重要になるのが、全金融機関からの同意です。

例えば、貸出残高が比較的小さく、また保全がない(担保や保証が薄くて「裸」の状態)場合、「当行は同意しかねます」なんてことになってしまうと本当に困ったことになります。
あくまでも民事再生や会社更生手続といった法的整理ではないので、債務者からすると、「将来にわたってしっかりと再生するので、なんとかご協力下さい」とお願いするしかありません。

収益を改善して返済原資を産み出して、「借りたものはしっかりとお返しする」という姿勢を見せることが最も重要です。
全ての金融機関からの協調体制が得にくい場合には、都道府県の中小企業活性化協議会に案件として挙げることも検討すべきです。

そして、各行から「同意」を頂いたからには、債務者である会社経営者は、必死になって経営改善計画を履行し、計画よりも収益を上振れさせなければなりません。
収益を計画よりも上振れさせることによって、経営改善のスピードをより加速させることができ、事業継続をより確かなものにすることができます。

コロナの影響が残る中小企業経営者は、リスケジュールや追加融資に際して、債権者である金融機関には常に謙虚で真摯な姿勢で対応する必要があるのです。

【中小企業のコロナ対策】手元流動性確保を最優先で伴走型資金を調達する効果とは?も併せてご一読下さい。

公式サイト「ポストコロナの中小企業の創造」もご覧下さい。

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