【中小企業の銀行対策】経営改善中の中小企業が唐突に直面するバルクセールとは?

今日は、中小企業の銀行対策として、経営改善中の中小企業が唐突に直面するかもしれないバルクセールについて考えます。

今日の論点は、以下の2点です。
1 本来債権回収は弁護士の専権業務である
2 一般にサービサーは強硬である

どうぞ、ご一読下さい。

1 本来債権回収は弁護士の専権業務である

「バルクセール」と聞いて、その意味や仕組みを正しく理解している中小企業経営者はそう多くないかもしれません。
特に、銀行取引が正常で、金融機関との関係性も良好であれば、なおのこと、バルクセールとは縁遠いものと言えます。

バルクセールというのは、金融機関が融資を行なっていたけれど、再生の見込みが薄いと判断された場合に、債権回収会社(通称「サービサー」と言います)に貸出債権を売却することを言います。

本来、債権回収業務は、弁護士もしくは弁護士法人の専権業務というべきものですが、我が国でも、金融機関の不良債権処理を円滑に進めることを目的として、貸出債権をサービサーに売却するスキームが定着することとなりました。
サービサーは、現在、全国で73社あり、反社等を排除するため、いずれも法務大臣に認可を受けて、債権回収業務を行なっています。
金融機関は、一つの貸出債権をサービサーに売却するのではなく、3月期末や9月中間期といったキリの良いタイミングで、大量の貸出債権をサービサーに売却します。
バルクセールの「バルク」とは、大量あるいはひとまとめという意味があり、バルクセールの呼称の由来ともなっています。
1990年代に不良債権処理を急ぐ大手金融機関が1貸出債権を1円で売却するようなこともやっていましたが、最近では、貸出債権の元本の3割から5割程度で売却されることが多いようです。
サービサーとしては、もともとの貸出債権の金額の半額以下で貸出債権を仕入れることができ、もともとの利率で利息を受領するため、相当程度の高利回りを期待することができます。

メガバンクから地方銀行に至るまで、概ね不良債権処理が一段落したことと、ゼロ金利、マイナス金利下で、かつ中小企業金融円滑化法の影響もあって、一時的にバルクセールは下火になっていました。
しかしながら、金利の上昇局面を迎え、預金金利の上昇よりも貸出金利の引き上げ幅が大きく、金融機関の好業績が目立つようになりました。
好業績によって、不良債権予備軍の貸出債権を思い切ってバルクセールで処理してしまうような傾向が強まっているように感じています。
このため、金融機関のバルクセールは再び増勢となっていることは間違いなさそうです。

ここ最近のバルクセールの傾向としては、金融機関は円滑化法とその後の行政指導の下、リスケジュールを実行してきたもののリスケジュール状態が長期に渡ってきて、収益改善が遅々として進まず、返済原資も生まれない状況が続いてきた融資先への貸出債権をターゲットとしてバルクセールに踏み切っているような傾向が見受けられます。
また、保全が薄いまたは保全のないような残高シェアの低い下位行ほど、バルクセールに踏み切るケースが多く、仮に不動産担保等の保全がある場合には、バルクセール時に担保等もサービサーが継承することとなります。

ちょうど、3月決算が近づいてきているこのタイミングで、収益改善を求めてきていた取引金融機関からの連絡が途切れてしまうと、バルクセールの準備に取りかかっている可能性もなきにしもあらずなのです。

【中小企業の銀行対策】経営改善中の中小企業が唐突に直面するバルクセールとは?

2 一般にサービサーは強硬である

それでは、実際に、金融機関の貸出債権がバルクセールでサービサーに売却された場合、中小企業経営者はどのように対処すべきなのでしょうか。
まず、取引金融機関側から「この3月末にサービサーに貸出債権を売却させて頂くことになりましたので」という具合の事前の通知は一切ありません。
貸出債権の売却手続きが完了してからサービサーから「〇〇銀行から貸出債権を当社が取得しましたので、今後のご返済等は当社へのご返済となりますので、ご了承下さい」という手合いの通知書が郵送されてきて初めて、サービサーに売却されたことを知ることとなります。
仮に不動産担保(根抵当権)も併せてサービサーに譲渡されると、不動産の登記事項証明書の乙区に根抵当権者の変更登記がなされてしまうので、その場合は、取引先等がバルクセールの事実を把握する可能性が出てきます。
ただし、無担保の貸出債権がサービサーに売却された場合、見た目にはバルクセールとなった事実を把握しようがありません。
したがって、無担保貸出債権のバルクセールは、債務者中小企業側が口をつぐんでいれば、取引先等第三者が把握することはできませんので、バルクセール即信用不安ということにはなりません。

とはいえ、実際のサービサーとの返済交渉は一言で言ってしまうと、なかなか「タフ」です。
債務者中小企業の側からすると、貸出債権がいくらで売却されたがわからないことが大きな障害となります。
例えば、元本50百万円の貸出債権がバルクセールとなった時、サービサーが取得した金額がわからないため、返済すべき金額が、もしかすると25百万円なのか、15百万円なのか、はたまた、5百万円なのか把握のしようがありません。
もしも、元本50百万円の貸出債権のサービサーの取得額が5百万円であれば、「一括返済、8百万円でどうか」とサービサーに持ち掛ければ、サービサーは3百万円の売却益を得て、鞘が抜けるので、サービサーにとっては濡れ手に泡です。
サービサー担当者は渋面をしてみせますが、担当者が会社に帰って上司に3百万円の売却益が取れることを報告すれば、上司は、「ようやったな」とお褒めの言葉を発すること間違いありません。

総じて、サービサーの基本的な回収スタンスは甘くはありません。
「3ヶ月先に20百万円、一括返済ということで」という具合に、取り付く島もないようなケースが散見されます。
サービサーはドライなので、回収の見込みが薄いと踏めば、別のサービサーに貸出債権を売却することも厭わないのです。
金融機関に対して、リスケジュール更新時に直近の決算書を睨みながら、FCFの範囲内で月額返済額を相談するのとは訳が違います。

リスケジュールが長期化し、取引金融機関の数が多いような中小企業は、バルクセールには要警戒です。

バルクセールでサービサーに貸出債権を売却されることのないよう、リスケジュール中の中小企業経営者は、背水の陣の思いで、抜本的に収益を急ぎ改善し計数として実績を示して、元本返済額を増額していく必要があるのです。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。

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