【中小企業の銀行対策】税法上の繰越欠損金が切れた後のBS正常化への道が険しいワケとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、税法上の繰越欠損金が切れた後のBS正常化への道が険しいワケについて考えてみます
今日の論点は、以下の2点。
1 繰損が残っているうちにBを正常化しなければならない
2 繰損期限切れ以降の金融機関返済が険しくなる
どうぞご一読下さい。
1 繰損が残っているうちにBSを正常化する
過去10年もの間、金融機関への返済が条件変更されている中小企業から相談を受ける時、ほぼ例外なく感じるのが、「税法上の繰損がほとんど残ってないやないか」というケースです。
大雑把にいうと、簿価債務超過額と税法上の繰越損失の金額がほと近似値であるはずです。
税法上の繰越欠損金の繰越期間が最長で平成31年度以降の10年間なので、単年度大幅赤字となって税法上の繰越欠損金がドドンと発生してから7年、8年と経過し、その間、抜本的な収益改善が行われないと、繰越欠損金が順次期限切れとなってしまいます。
単年度大幅赤字が金融機関への元本返済が難しくなることが多いため、経営改善を先送りすると、繰越欠損金がなくなる一方で、簿価債務超過が残ったままであるばかりか、リファイナンスを実現するために必要となるような返済原資を生み出すことができない状況が続いてしまいます。
単年度大幅赤字は、特殊要因によるものが多いためそれはそれで仕方がないとしても、大幅赤字の要因を明確にして、ブッチリの収益改善を実現しなければなりません。
繰越欠損金がなくなってしまうと、中小企業にとっては重たい重たい法人税の負担がのしかかります。
繰越欠損金が健在であるうちに、簿価債務超過を解消しておく必要があるのです。
2 繰損期限切れ以降の金融機関返済が険しくなる
繰越欠損金が期限切れとなってしまうと、法人税負担が重く重くのしかかることを申し上げました。
実は、繰越欠損金がなくなってしまって、経営改善局面の中小企業が苦しむのが金融機関への返済負担です。
繰越欠損金が生きていれば、税引き前当期純利益の多くを金融機関返済に回すことができます。
他方、繰越欠損金が期限切れとなってしまった後は、税引き前当期純利益から法人税を納付した税引後当期純利益と減価償却費を加えたものが簡易CF(キャッシュフロー)となって、返済原資となります。
税引き前当期純利益10百万円、減価償却費2百万円の場合、繰越欠損金が15百万円以上あれば、理屈上、年間12百万円の返済原資を生み出すことができます。
しかしながら、繰越欠損金がなければ、法人税等3百万円(概算です)となり、理屈上の返済原資は年間9百万円にまで減少してしまいます。
条件変更(リスケジュール)をしていた場合、繰越欠損金に有無によって、リファイナンスへの道のりには大きな差が出てしまいます。
繰り返しますが、繰越欠損金の繰越期間は10年間。
実抜計画(実現可能性があり、かつ抜本的な経営改善計画)の計画期間が基本10年間であることもその点で合理的です。
このように、単年度大幅赤字に陥った場合、ましてや大幅赤字によって返済の条件変更(リスケジュール)を行なった場合には、時間を置くことなしに、爆速で抜本的な収益改善を図ることで、税法上の繰越欠損金を最大限り要する必要があるのです。