【中小企業の銀行対策】試算表上で利益が出ているのに資金繰りが窮屈な理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、試算表上で利益が出ているのに資金繰りが窮屈な理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 返済原資となる簡易CFの計算式
2 返済のための借換は会社の首を絞める

どうぞ、ご一読下さい。


1 返済原資となる簡易CFの計算式

初対面の中小企業経営者から「試算表では利益が出てるんやけど、一向に資金繰りが改善せんのは何故なんやろう?」という疑問の声をお受けします。
確かに、切実なお話で、資金繰りが窮屈なままですと、攻めの投資もできませんし、増加運転資金が必要となる売上増も容易に実現できなくなります。

試算表で利益が出ているにも関わらず資金繰りが好転しないケースの多くが、「長期借入金の返済負担が重いこと」に起因します。
一部の経営者が誤解しているのは、銀行への月次返済の内、支払利息は、営業外費用として費用計上されるので、試算表の損益計算書にはねます。
ところが、元本返済分は、貸借対照表の負債勘定の減少となるため、損益計算書には反映しません。

つまり、金融機関への借入金の元本返済分は、利益から捻出しなければならないのです。
では、金融機関への元本返済原資は、簡易的な計算式である簡易CF(キャッシュフロー)で算出されます。
簡易CFの計算式は、「簡易CF」=「経常利益」+「減価償却費」ー「法人税」です。
仮に、月次元本返済額1,250千円(年間元本返済額15,000千円)の場合で、減価償却費が月額200千円(年間減価償却費2,400)、中小企業向け法人税率32.0%と仮定すると、必要となる経常利益は18,529千円となります。
簡易CFとしては、「簡易CF」=「経常利益」18,529千円+「減価償却費」2,400千円ー「法人税等」5,929千円=15,000千円と計算されます。
つまり、年間15,000千円の元本返済に耐え得るためには、18,529千円以上の経常利益が必要となるというわけです。

【中小企業の銀行対策】試算表上で利益が出ているのに資金繰りが窮屈な理由とは?

2 返済のための借換は会社の首を絞める

ここまで読み進めて下さった中小企業経営者の中には、「え? そんなに利益が要るんかいな」と驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。
試算表や決算書は、基本的に足し算と引き算の世界なので、粉飾していない限り、試算表は正直です。
簡易CFが年間元本返済額に満たない状況になれば、現預金は減少していきます。

そして、簡易CFが年間元本返済額に満たない状況が続いて、「あかん、キャッシュが足りなくなりそうや」となれば、既往の長期借入金の折り返し(例えば、当初50百万円で調達した借入金で、返済が進んで残債が20百万円まで減ったので、また50百万円、借換えること、真水は30百万円)で借り換えることを繰り返すことになります。
このような場合、往々にして、折り返しまでのタームが、最初は3年間であったのが、2年間に縮まって、更に1年間にまで詰まってしまうと折り返しが効かなくなって、リスケジュールを余儀なくされてしまうのです。

このように、返済のために、長期借入金の折り返しを繰り返していれば、間違いなく会社の首を絞めることになります。

中小企業経営者は、簡易CFが年間元本返済額を下回るような状況に陥った場合には、売上増、コストカットを並行して進めて、一刻も早く経営改善に取り組む必要があるのです。

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