【中小企業の銀行対策】銀行によって短期プライムレートに差がある理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、銀行によって短期プライムレートに差がある理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 短プラの差は銀行個別の調達コストを反映する
2 肝心なことは短プラに何%上乗せされているかである

どうぞ、ご一読下さい。

1 短プラの差は銀行個別の調達コストを反映する

日本銀行の追加利上げを受けて、メガバンクを皮切りに、地方銀行各行も短期プライムレートの引き上げを発表しています。
短プラの引き上げは、概ね9月の初旬からで、引き上げ実施日から、中小企業にとっての支払利息が増額されます。

銀行別では、メガバンク3行は現状の1.475%から1.625%、りそな銀行が現状の1.725%から1.875%、関西の地方銀行だと、京都銀行、南都銀行が現状の2.175%から2.325%、りそなグループのみなと銀行が現状の1.800%から1.950%、関西みらい銀行が現状の2.550%から2.700%に引き上げられます。
引き上げ幅は各行横並びの0.150%です。
各銀行が相次いで短プラの引き上げを発表する中で、目立つのが、「銀行によって短プラに差があること」です。
なぜ、銀行によって、短プラに差が出てしまうのでしょう?

そもそも銀行のビジネスモデルは、不特定多数の企業や一般個人から預金を集めて、預金を原資として、大企業や中小企業、住宅ローン等個人に融資をします。
融資先から受領する貸出金利息が一般企業の売上高に、預金者に支払う預金利息が売上原価となります。
単純にモデル化すると、貸出金利息と預金利息との差額が売上総利益に該当します。
その上で、銀行別に短プラに差が出てしまう理由は、預金者に支払う預金利息が相対的に多ければ多いほど、融資先への貸出金利息の利率を高く設定する必要があるからです。
わかりやすく申し上げると、流動性預金(当座預金や普通預金等)よりも固定性預金(定期預金、積立定期、定期積金等)の比率が高い銀行ほど、短プラを高く設定します。
更に具体的にいうと、メガバンク等大手銀行は、大企業との取引が多いため流動性預金の比率が高い一方、地方銀行、中でも第二地銀(旧相互銀行、最近では地銀と第二地銀の合併が進んでいるため1.5地銀のような銀行も存在する)は個人預金を多く集めるため、固定性預金のウェイトが高い傾向が見受けられます。

このように、短プラの差は、預金の調達構造によって生じているというわけです。

【中小企業の銀行対策】銀行によって短期プライムレートに差がある理由とは?

2 肝心なことは短プラに何%上乗せされているかである

ここまで、銀行によって短プラに差が生じる理由について考えてきました。
ここからは、個別の中小企業経営者が知っておくべき自社に関する短プラにまつわる話をしていきます。

銀行等ほとんどの民間金融機関(信金は除く)の中小企業向け融資の場合、一部優良先にはTIBOR3ヶ月ものの市場金利連動金利が適用されていますが、ほとんどの中小企業の場合、短プラ連動が主流です。
短プラ連動とは、短プラに、格付けや債務者区分、保全状況等に合わせて上乗せ幅が決められている融資を言います。
例えば、自行短プラ2.175%で、上乗せ幅が0.500%の場合、出来上がりのレートは2.675%となります。
この上乗せ幅が小さければ小さいほど、「優良先」という風に銀行は評価していることが想定されます。

ここで、中小企業経営者として、肝心なことは、メインバンクの短プラが何%で、上乗せ幅がどれだけかを知っておくことです。
適用レートを知る術としては、金銭消費貸借契約書や当座貸越設定契約書を参照したり、返済予定表にも適用レートが記載されています。
もしも、上乗せ幅が大きければ、財務体質が脆弱である可能性が高いため、すぐに、経営改善に取り掛かる必要があります。
また、上乗せ幅が小さくても、それに安住することなく、上乗せ幅をより小さくできるよう、財務体質をより強靭なものにする弛まぬ経営努力が必須です。

短プラの上乗せ幅をより小さくして、債務者区分や信用格付けを高めることが必要な理由が、今後も緩やかながらも短期の市場金利は上昇局面を辿る可能性が高く、それに合わせて、短プラが引き上げられていくことが想定されるからです。
支払利息は文字通り、固定費となってしまいます。
適用レートが想定以上に高くなれば、本業で稼いだ貴重な営業利益が支払利息で吹っ飛んでしまうことさえ起こり得ます。

中小企業経営者は、長らく続いてきたゼロ金利、マイナス金利時代の感覚を捨てて、金利へのリテラシーを高めていく必要があるのです。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA