【中小企業の銀行対策】金融機関が追加融資に応じにくくなるプロセスとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関が追加融資の応じにくくなるプロセスについて考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 貸倒引当金という概念を知る
2 不良債権予備軍には追加融資は難しくなる
どうぞ、ご一読下さい。
1 貸倒引当金という概念を知る
金融機関では融資先中小企業の「安全性」に重きを置いています。
不良債権の増加によって、不特定多数の一般預金者から預かっている預金の払い戻しに支障が出るようなことがあっては金融機関としては許されないので、貸出金が焦げ付かない、不良債権にならないよう、安全性を重視するのは、当然と言えば当然です。
ここでいう「安全性」という観点からすると、金融機関は融資先の財務状況の健全性が保たれているかという点で融資先を評価します。
たとえ、一時的に赤字に転落したとしても、財務状況が健全(実態ベースのBSが十分に資産超過であること)であれば、金融機関としてはそれほど警戒はしません。
ところが、過年度の赤字が積み重なり、累積損失が多額に上り、実態ベースで債務超過にあるような融資先が、収益改善を図り黒字転換しても、簡単に追加融資を、というわけには行きません。
先ほども、申し上げましたが、金融機関では、不特定多数の一般預金者からの預金の払い戻しに支障が出ないよう、財務体質が脆弱な融資先に対して、個別貸倒引当金を積むようにしています。
一般の事業会社ではイメージしにくいかもしれませんが、債務者区分がその他要注意先から要管理先に滑り落ちると、担保や保証協会の保証等で保全されない実質信用部分について、一定額の個別貸倒引当金を積みます。
金融機関では、融資先の「突然死」に備えて、経営破綻状態ではない融資先に対しても、予防的に個別貸倒引当金を積むことで、突発的な不良債権発生に備えているのです。
信用保証協会の保証がついていても、制度融資ではない一般融資などの責任共有分20%分についても、引当を積みます。
引当を積むことを金融機関では「与信費用を積む」という言い方をするのですが、メインバンク担当者が口を滑らせて、「当行でも与信費用を積んでいますので」と口走ることがあれば、要管理先以下、不良債権になっていることを経営者は知っておくと良いかもしれません。
このように、予防的に与信費用を積む、貸倒引当金を積むという状況に陥ったのであれば、リストラなどを排除しないような抜本的な経営改善を図る必要があります。
2 不良債権予備軍には追加融資は難しくなる
このように、債務者区分がその他要注意先で止まるのか、要管理先に滑り落ちるかでは、融資を受けている中小企業にとっては無視できない重大な岐路といえます。
仮に、要管理先以下に債務者区分が落ちてしまうと、営業店の部店長は、追加の与信を出した後、間を置かずに与信費用を積むのあれば、独立採算の営業店では大損になってしまいます。
このため、営業店の部店長は、要管理先以下の与信先への基本スタンスを、信用保証協会の保証を大前提にして、100%保証の制度融資のみに限定したり、そもそも、追加融資は一切応じないことにもなりかねません。
一方、信用保証協会としても、リスクを協会に全てまくられたら教会としてもたまったものでは無いので、結果的に、保証承諾は得られなくなる可能性が高いのです。
このようにして、従来までは追加の融資を得られていたにもかかわらず、融資の可否の判断により時間がかかったり、融資を謝絶されたりするプロセスは、上記のような金融機関での手続きが起因しているのです。
中小企業経営者は、追加の融資が得られない、あるいは得にくくなる気配を感じた場合には、収益改善とBS健全化への取り組みを明確にしながら、資金繰り表を作成して、リスケジュールを含めた銀行対応を検討する必要があるのです。