【中小企業の銀行対策】資金調達が中小企業の銀行対策のごくごく一部に過ぎない理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、資金調達が中小企業の銀行対策のごくごく一部に過ぎない理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 融資を受けたい時だけに取引金融機関の扉を叩くのはNGである
2 中小企業経営者は取引金融機関に会社の現状を日頃から伝える
どうぞ、ご一読下さい。
1 融資を受けたい時だけに取引金融機関の扉を叩くのはNGである
弊所では、中小企業の銀行対策を行なっていますが、「融資をどのように引き出すかがお仕事なんですよね」という声かけをされることがあります。
ところが、これは大間違いで、「融資を受けること」=「銀行対策」という認識は大きな誤りです。
確かに、世の中のコンサル会社さんで、「融資や助成金の実績がこんなにあります」なんてホームページ上で表現されているケースが散見されます。
融資や助成金を受けることで、その成功報酬を頂戴するというのはわかりやすいビジネスモデルですが、弊所がやっている業務はそんな綺麗な仕事ではなく、泥臭く、地味な取り組みです。
まず、金融機関から融資を受けている中小企業は、債務者区分や信用格付などによって、ランク付けをされています。
債務者区分や信用格付が、金融機関の与信所管部署での必要な資金の融資の可否への大きな判断材料となります。
このため、融資を受けようと取引金融機関に融資の打診をしたところで、その時点で、債務者区分や信用格付を良化させることは不可能なのです。
債務者区分や信用格付を良化させるための対策は、一日にしてならずというもので、半年、1年、数ヶ年に渡るようなタームでの地味で、耐久的な取組が必要です。
弊所では、中小企業経営者に伴走するような形で金融機関に同行をし、会社の現状を金融機関担当者に対して、試算表、資金繰り表を添付して、わかりやすく伝えるような仕事をしています。
間違って、融資を受けたい時だけ、取引金融機関の扉を叩いて、担当者に、「月末までに30百万円、融資、頼むで」では、信頼関係を醸成しようがありません。
金融機関担当者は、「この社長、融資を受ける時だけ、電話してくるけど、ホンマ、調子のええやつや」とネガティブに捉えてしまいます。
資金調達(融資を受ける)は、中小企業の銀行対策としては、ごくごく一部分にしか過ぎず、銀行対策は地味な取組に他ならないのです。

2 中小企業経営者は取引金融機関に会社の現状を日頃から伝える
中小企業が融資を受けている金融機関の債務者区分や信用格付を引き上げていくために必要なことは、ずばり、会社の現状を継続的で、タイムリーに伝え続けることしかありません。
上場できるような会社であればとにかく、売上高1,000百万円程度の中小企業であれば、決算書のBS(貸借対照表)に何かしら疑義のある勘定科目が存在したり、収益も赤字にはならないにせよ、返済原資となるFCF(もしくは簡易CF)が年間の元本返済額に達していなかったりすることは珍しくありません。
トヨタ自動車ではあるまいし、中小企業であれば、財務上(BS上)で何かしらの問題を抱えているのが自然です。
そうした場合、仮に債務者区分は「正常先」であったとしても、信用格付はまだまだ上振れさせる余地があったりします。
そのため、弊所では、お客様の中小企業に対して、原則月次でのモニタリング(業況報告)を推進しています。
試算表については、発生主義を徹底して精度を上げて、資金繰り表も毎月アップデートします。
経営改善計画が策定してあったり、通期の業績予想が設定してある場合には、収益予想を月次で振って、予定値に対して実績値との乖離を検証する予実管理(ヨジツカンリ)も行います。
予実管理によって、実績値が上振れればOKですし、下振れた場合には下振れた要因を特定して、当月以降、収支改善に向けて各種施策を修正することが重要です。
このような取組を取引金融機関に対して実践することで、取引金融機関は融資先の状況をつぶさに把握することができるようになり、近い将来発生するであろう資金需要に対して、余裕を持って、資金調達の要請ができるようになります。
金融機関での融資の可否は、全て稟議手続きによるので、今日の17日の段階で「月末までに30百万円お願いしたいのですが」と金融機関に要請をしても、物理的に時間的余裕がありません。
資金調達の必要があるとなれば、少なくとも1ヶ月前には金融機関担当者に打診することが必要です。
このように、中小企業が金融機関から資金調達しようとしても、金融機関の組織的な手続きが必要となるため、情報開示(ディスクローズ)を継続的にかつタイムリーに行うことと、資金調達には時間的余裕を持つことが必要不可欠です。
中小企業経営者は、取引金融機関を最重要ステークホルダー(利害関係者)と位置付け、主体的で積極的にコミュニケーションをとり続けることが必要なのです。