【中小企業の銀行対策】経営者保証解除をメインバンクから勝ち取るために必要なこととは?
今日は、中小企業の銀行対策として、経営者保証解除をメインバンクから勝ち取るために必要なことについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 経営者保証解除の4要件とは
2 経営者保証解除によって実現可能性が高まること
どうぞ、ご一読下さい。
1 経営者保証解除の4要件とは
日本の銀行取引ならではの取引慣習として、経営者保証(経営者の連帯保証)です。
おそらく、近隣のアジア諸国にも欧州、北米でも、経営者保証という制度は皆無だと北出は勝手に考えています。
経営者保証(連帯保証)とは、端的に言ってしまえば、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者やその一族が連帯保証人として、会社への連帯保証債務を負うことです。
早い話、会社が立ち行かなくなって、破産手続きに移行する際に、経営者保証の履行を求められる経営者やその家族に連帯保証債務が求償されることで、経営者とその一族の個人も会社と道連れに破産手続きを選択せざるを得なくなることです。
現在の合衆国大統領ドナルド・トランプ氏は、過去、自身のビジネスの失敗によって、複数回、会社を破産させているようですが、合衆国には連帯保証という概念がそもそも存在しないため、会社と個人は別人格と明確に区分されています。
このため会社を破産させて間もなく、再び、会社を立ち上げて事業をスタートすることができるというわけです。
もちろん、このようなモラルハザードを横行させないためにも連帯保証債務という制度の意義は理解できますが、それにしても、我が国では、一度会社と共に、個人が破産手続を踏んでしまうと、個人の個人信用情報(コシン)がブラックになってしまって、クレジットカード1枚作れない状態が最低5年間継続するなど、会社はとにかく、個人破産のペナルティは無視できないほど大きなものと言えます。
そのような状況を打破すべく、金融庁が公表している経営者保証ガイドラインによれば、過度な保証や担保に頼らない融資取引の実践を金融機関に要請しています。
実際、経営者保証ガイドラインに基づいて、経営者保証を解除していくためにどのようなことが必要なのか、簡単にご説明することにします。
バクっと言ってしまうと、経営者保証解除に必要な要件は4つあります。
1つ目が、会社と経営者個人を明確に分離することです。
会社から経営者へ貸付金が出ていれば、BSに短期貸付金や長期貸付金が計上されていて、会社と個人がごちゃまぜになってしまっているので一発アウトです。
また、よくあるのが、本社の社屋が会社名義である一方、本社の底地(土地)が社長個人名義で、会社が社長に家賃を払っていても一発アウトです。
2つ目が、安定したBS、財務体質と毎期安定して利益を出し続けていることです。
実態ベースで、安定的に資産超過で、実質債務超過に陥る可能性が低いことが挙げられます。
3つ目が、ディスクローズです。
一般的に、3ヶ月毎に試算表や資金繰り表といった業況のわかる資料を金融機関に開示し続けることです。
弊所では、お客様の中小企業への経営者保証解除に注力していますが、ディスクローズ、モニタリングは毎月を原則にしていて、私北出が、お客様の中小企業経営者に帯同して、金融機関担当者と面談するようにしています。
4つ目は、非公式で北出の勝手な解釈で、3つ目に関連しますが、取引金融機関との信頼関係醸成です。
ディスクローズ、モニタリングを継続し続けることによって、金融機関担当者、場合によっては上席の役席者や、部店長(支店長等)、次席(次長、副支店長等)にも同席してもらうようにしています。
平たくいってしまえば、取引金融機関から、「この融資先の社長は真面目で、堅実で、会社も財務体質が安定していて、利益も出ているから経営者保証を解除しても差し支えないやろ」と思ってもらうことが最も肝心なことです。

2 経営者保証解除によって実現可能性が高まること
弊所では、繰り返しになりますが、ここぞと思われる中小企業経営者に積極的に経営者保証解除への取組を提案しています。
実際、経営者保証解除を取引金融機関から勝ち取った時、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ゼロから会社を立ち上げ、一代で会社を大きくした創業者にして経営者は、バブル崩壊やリーマンショック、最近では、新型コロナウイルス感染症拡大といった想定外のネガティブな外部要因に遭遇し、立ち向かってきました。
中小企業であれば百戦百勝であるはずはなく、決して、平坦な道ばかりを歩んできたわけではありません。
だからこそ、後継者候補で直系の子息がいても、「俺のようなカネの苦労はさせたくない」と心のどこかで心配をしています。
また、後継者として手を挙げる直系の子息としても口には出さないまでも、「なんで、親父の代でできた借金の連帯保証人にならなあかんのや」と心に期するものがないとは言えないのです。
他方、直系の子息への事業承継の前段階で、経営者保証を解除することができれば、創業者にして経営者は、心置きなく、事業承継へのバトンタッチに踏み切ることができるようになる可能性が高まります。
さらには、個人保証を求められない直系の子息からすれば、「会社の連帯保証人でないのなら、俺が事業承継させてもらうわ」と積極的に事業承継に手を挙げてくることが大いに期待できます。
経営者保証がなければ、極端な話、会社が経営破綻に陥っても、合資会社、合名会社を除けば、経営者個人は債権者からの求償を受けることはありません。
また、内々で後継者が見つからず、M&Aにて第三者に株式を譲渡する際にも、個人保証がなければ、株式の売却価格をより高めることができるかもしれません。
北出は勝手に、事業が許す限り、事業家は政治家ではないので、血縁で事業を承継していくべきという風に考えているので、個人保証解除は円滑な事業承継に直結するといっても過言ではないほどです。
このように、経営者保証解除は、中小企業にとって、究極の銀行対策であると考えています。
中小企業経営者の皆さん、事業承継は現世代経営者に健康上の不安がない限り、緊急性は高いとは言えませんが、経営者といっても、いつかはリタイアすることになるため、今の段階から、事業承継への第一歩として、個人保証解除への取り組みを始めてみてはいかがでしょう。
公式サイト「子息・子女までの次世代に残せる中小企業の創造」もご一読下さい。
