【中小企業経営者の心得】「船頭多くして船山に上る」を反面教師とすべき理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、「船頭多くして船山登る」を反面教師とすべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 中小企業の船頭は一人に限る
2 中小企業の船頭は取引金融機関とのパイプ役となる
どうぞ、ご一読下さい。
1 中小企業の船頭は一人に限る
我が国の中小企業の数は300万社内外と言われますが、そのほとんどが、オーナー経営です。
オーナー即ち株主が、代表権を持つ取締役で、社内的には「社長」と呼ばれます。
いわば、所有、意思決定、業務執行をオーナー社長一手に担っているわけで、一面では「やりたい放題」でありながら、ほとんどのオーナー社長は良識を持って、会社の舵取りを行なっています。
社員を奴隷のように使って、役員報酬をドッサリと取るようなことができるといえばできるのですが、そのような人種では、今時社長業は務まりません。
むしろ、船頭は一人の方が、意思決定が早く、明確なので、社内的にも対外的にもわかりやすいのです。
他方、例えば、創業者から事業承継で、創業者の長男が社長、次男が副社長といった具合の二頭体制の場合、多くのケースで、社長と副社長が経営方針を巡って対立して、社内も「社長派」、「副社長派」といった具合に分裂してしまうこともなきにしもあらずです。
世間的には、こういうケースは珍しくなく、よくあるケースです。
船頭が二人いて、その二人が対立しているような会社では、北出のような経営コンサルタントとしても非常に対応に困ります。
ましてや、従業員はたまったものではありません。
「社長と副社長の言ってることが違う。どっちの指示に従えばいいのやろうか?」となっては会社は立ち行きません。
もちろん、上場するような会社の規模であれば、取締役が取締役会で一同会して合議して会社の方針を決定するというのが現実的なのかもしれませんが、中小企業や小規模事業者であれば、船頭は一人で十分です。
もっと言えば、中小企業の船頭は一人に限るのです。
2 中小企業の船頭は取引金融機関とのパイプ役となる
中小企業にとって重要な社外ステークホルダーの一つが、取引金融機関です。
中でも、メインバンクは、資金調達の源のような存在です。
メインバンクとの信頼関係作りにおいても、船頭が一人であることは効果的です。
社長と副社長がいて、社長が取引金融機関とのパイプ役であった場合、取引金融機関担当者からの質問に対して、「そちらの部門に関しては、弊社の副社長が所管しておりますので、後ほど確認してご連絡させて頂きます」と逃げるのは良いのですが、金融機関担当者とすれば、口には出さずとも(え? 社長が把握されてないのですか?)と心配になっても不思議ではありません。
さらに言えば、金融機関からすれば、社長と副社長との間で、きちんとコミュニケーションが取れているのか懸念事項となってしまいます。
金融機関担当者からすれば、「社長の言葉は重たい」というのが基本的なスタンスなので、社長が全て掌握しておいてほしいというのが本音なのです。
「船頭多くして船山登る」とは船頭が多すぎて、船が山のようなとんでもないところに行ってしまうという諺で、個人的にはよく言ったものだと感心します。
中小企業経営者は、自らが社内でただ一人の船頭であることを認識して、必要に応じて様々な専門家の意見を聴取しつつ、しっかりと会社の舵取りを行い、従業員を良い方向に導いていく重たい役割を担っていることを自覚する必要があるのです。