【中小企業の銀行対策】税法上の繰り損なき経営改善のハードルが高いわけとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、税法上の繰り損なき経営改善のハードルが高いわけについて考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 法人税負担が返済原資を毀損する
2 法人税負担を加味した収益改善断行が不可欠である
どうぞ、ご一読下さい。
1 法人税負担が返済原資を毀損する
中小企業金融円滑化法施行から早15年が経過しました。
法律自体は既に期限切れとなっていますが、行政庁は引き続き金融機関に対して、「債務者からの返済条件緩和の申し出には柔軟に対応すること」という強烈な行政指導を継続しているので、もはや、条件変更(リスケジュール)は、金融機関営業店としては、「リスケなんかふざけんな!」と無碍に跳ねつけるわけにはいかず、リスケは営業店融資係にとっては珍しいものではなくなりました。
とはいえ、借入金は、当たり前のことですが、「借りたカネは返さなければならない」ものです。
その昔、「借りたカネは返すな」という本がバカ売れした時がありましたが、そのような類の書籍がバカ売れすること自体、世の中腐っています。
借入金は、くれてもらえる補助金や助成金とはわけが違います。
永遠にリスケジュールが許されずはずはなく、リスケジュール中の中小企業は、収益を改善し、返済に耐えうる会社に生まれ変わり、借入金を圧縮していかなければなりません。
多くのリスケジュールを受けている中小企業は、過去の赤字によって資金繰り余力が低下したことがあります。
このため、過去の赤字がもたらしてくれた税法上の繰越損失が最長10年間繰り越すことができるので、収益改善を進めて、利益を計上しても、法人税負担がないケースが大半です。
このため、収益改善の果実の多くを元本返済に充当することができるので、リスケジュールからの脱却にメドがついてくる中小企業が少なからず存在します。
税法上の繰越損失が、返済原資を産んでくれるというわけです。
逆に言えば、税法上の繰越損失の繰越期間が満了してしまうと、税法上の繰越損失が消滅してしまうので、利益が出ると、法人税を納付しなければならなくなります。
当たり前ですが、法人税に納付のタイミングは、決算申告と同時で、かつ、「前払い」です。
法人税の負担は逃れられないものですが、現実的には、法人税負担が元本返済原資を毀損してしまうことになるのです。
2 法人税負担を加味した収益改善断行が不可欠である
このように、収益改善を図っている中小企業にとって、資金面で高いハードルとなっているのが法人税の負担ですが、経営改善計画には、収益が改善して税法上の繰越損失を使い切ったり、期限切れとなるケースでは、当たり前ですが、税法上の繰越損失を反映させています。
とはいえ、いざ、税法上の繰越損失がなくなってしまうと、今までの税法上の繰越損失の恩恵を受けてきた中小企業経営者の肌感覚からすると、「え! こんなに法人税って払わなあかんのかいな!」となってしまうケースが多いようです。
法人税は日本国内で商いをしている以上、逃れることができませんし、先ほど申し上げましたが、法人税は「前払い」です。
こう言ってはなんですが、納税の義務は日本国憲法に記されているもので、納税は重たいものです。
とは言いつつも、せっかく、収益を改善して元本返済額を増額してきても、法人税を納付するようになった途端、下手をすると、金融機関への元本返済額を減額する羽目にもなりかねません。
このような事態にならないためにも、経営改善中の中小企業経営者は、法人税の負担を大前提として、法人税をしっかりと納めることを肌感覚的で理解しながら、法人税を収めるのに余りあるようなので収益を産み出すことを目指して、経営改善を図っていく必要があるのです。