【中小企業の銀行対策】安易な長期借入金の折り返しが過剰債務の温床となる理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、安易な長期借入金の折り返しが過剰債務の恩賞となる理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 返済のための借入はもうやめよう
2 収益確保によって返済原資をなんとしても死守する
どうぞ、ご一読下さい。
1 返済のための借入はもうやめよう
多くの中小企業が、長期運転資金の借入金を金融機関から調達しています。
長期借入金の調達に当たっては、「なんとなく資金が足りなくなりそうだ」と中小企業経営者が金融機関に資金の要請をすると、「それなら、社長、保証協会の保証をつけて、今まで返済が進んだ20百万円に今の残債に加えて、元々の50百万円の借入で追加融資させてもらいます」というケースが少なくありません。
当初50百万円、期間5年間で長期運転資金を実行してもらって、丸2年間返済をして、残債30百万円の借入金を元々の50百万円で借り換えるやり方が「折り返し融資」などと呼ばれたりします。
この場合、年間元本返済額が10百万円(月額元本返済額833千円)ですが、簡易CF(=経常利益ー法人税等+減価償却費)で求められる簡易的な返済原資の金額が年間10百万円に達しない収益状況であれば、元本返済後の現預金はどんどん目減りしていきます。
簡易CFが10百万円未満の収益状況を放置すれば、近いうちにキャッシュが枯渇してしまうので、取引金融機関の担当者は、「じゃ、既存の借入金を折り返せば当座の資金は確保できますよ」と安直に既往の借入金の折り返しに取り組もうとします。
保証協会の保証付であれば、責任共有分はあるにせよ、保証協会の保証は80%付くので、金融機関営業店としても比較的リスクの小さな融資案件なので、支店長は「とりあえず、協会の保証だけちゃんとつけとけよ」で片付けてしまいがちです。
しかしながら、当座の資金の確保のためとはいえ、安直に長期借入金を折り返すと、事実上、「返済のための借入」ということになってしまいかねません。
これでは、借入金の圧縮はままならず、安直な長期の折り返しそのものが過剰債務の温床となってしまうのです。
2 収益確保によって返済原資をなんとしても死守する
比較的安直な資金調達方法である既往の長期借入金の折り返しですが、コロナ資金とコロナ借換保証の制度の期限切れとなった今では、長期借入金の折り返しが難しくなってきています。
金融機関としては、コロナ資金とその関連資金が100%保証であった一方で、コロナ資金とその関連資金の制度なき今では、責任共有部分の80%分について、金融機関側に危険負担が生じるので、金融機関側としては、プロパーを出せないような先には、追加融資を出しにくくなってしまっています。
話を長期の折り返しに戻すると、当座の資金確保のための長期の折り返しによる資金調達を行うのと同時に、折り返した長期借入金の元本返済を確保するための経営改善が必須です。
安易な折り返しを続けていくと、キャッシュアウトのペースが早まり、折り返しまでの期間が短くなっていって、果ては折り返しが効かなくなって、リスケジュール(返済条件変更)に追い込まれてしまうことになりかねないのです。
長期運転資金の借入金を調達している中小企業経営者は、常に年間元本返済額を念頭に置いて、年間元本返済をカバーできるような簡易CFを確保していく弛まぬ経営努力が必要なのです。