【中小企業の銀行対策】地域金融機関の「おカネの地産地消」とは?
1 地域金融機関の「おカネの地産地消」とは何か?
今日は、中小企業にとって欠かせない地域金融機関の「おカネの地産地消」について考えてみます。
中堅企業の場合、メインバンクをメガバンクにしているケースが多いかもしれませんが、言われる中小企業、小規模事業者のメインバンクは、その地域を地盤とする地方銀行や信用金庫、信用組合といった地域金融機関となっているのが普通です。
地域金融機関のあるべき姿とは、中途半端な地域貢献を謳うよりも、地域で集めた預金を全力でその地域の中小企業、小規模事業者、もしくは一般個人に「融資」という形で資金を還流させるべきだと北出は考えています。
これを一般に地域における「信用創造」と経済学では教えられるのかもしれませんが、地域内での「信用創造」こそが、「おカネの地産地消」に他なりません。
地方銀行の一部には、本来地盤とする地域を預金を集める「資金調達エリア」と位置付け、大都市圏でホールセールス的な融資を行なっていたりしますが、そのような地方銀行には、今一度、本来地盤とする地域の中小企業、小規模事業者を見直して、後継者がいたり、営業力、技術力のある会社を掘り起こして、保証協会、担保、人的保証に過度に依存しないような融資を拡げて欲しいと北出は、切に願っています。
また、低預貸率の金融機関も問題です。
地域で集めた預金を上部団体に預け金として資金を丸投げしたり、内外の公社債に積極的に投資をするような地域金融機関は、その地域での「おカネの地産地消」を放棄してしまっています。
特に、国内外の公社債他、金融商品による運用を積極化している金融機関は危なさを感じないわけにはいきません。
預貸率が低く、著しいローンポジションにある金融機関には、様々な証券会社等が運用商品を推奨してきます。
表面上の格付けが高い金融商品に手を出してしまうことは、預金等受入金融機関として疑問を感じざるを得ません。
さしづめ、中小企業経営者の側からすると、機関投資家気取りの低預貸率の金融機関をメインバンクに据えるのは危険です。
金融機関の現場サイドからしても、一社一社、コツコツと地場中小企業、小規模事業者を歩いて新規開拓にひたすら打ち込む営業店の新規専担の渉外担当者からすれば、「何のための新規融資開拓なんや!」とやってられなくなります。
「地域金融機関の役割とはなんぞや」。
この古くて、新しい課題に地域金融機関は向き合って欲しいと北出は考えています。
2 またしてもアメリカがきな臭い
今日、地域金融機関の低預貸率を問題視して、この記事を書いている理由が、この週末の米国発の金融機関の相次ぐ破綻報道です。
なぜ、低預貸率の金融機関が問題なのか?
融資よりも資金運用に依存するリスクとは何なのか?
ぜひ、中小企業経営者に知っておいて欲しいので、以下に掘り下げます。
米国は長期間に渡って続いてきた低金利状態からいわゆる「金利がつく」状態となりました。
謂わば、金利がつく「普通の金融マーケットが戻ってきた」ということができるかもしれません。
他方、この週末に米国で金融機関が破綻した理由の一つとして考えられるのが、保有していた債券価格が下落したことだとされています。
低預貸率で、過度に証券投資のような資金運用に手を出していた金融機関が、金利の上昇(即ち債券価格の下落)に耐え切れず、破綻に陥ってしまったと考えられます。
「いや〜、大丈夫、大丈夫や。所詮は海の向こうのことで対岸の火事、こっちには飛び火すること、あらへんのや」とたかを括っているわけにはいきません。
リーマンブラザーズの破綻後にやってきたリーマンショックを忘れてはいけません。
低預貸率で、証券投資依存の金融機関にとっては、市場での金利変動リスクは外部要因の脅威でしかないので、その影響を自らの経営体力では吸収できません。
他方、高預貸率のメガバンクや地銀大手でも、このような金利変動リスクにさらされていないわけではありませんが、市場での金利変動リスクによる影響は、高預貸率(つまり証券投資依存度が相対的に低い)であれば比較的軽度で済みます。
ましてや、貸出先が特定の業種や業態に偏らず、大口融資先に依存していなければ、万が一、融資先が経営危機に陥ったとしても、金融機関として、出向者を出して人的に支援するなど、経営のテコ入れに関与することができるため、高預貸率の金融機関は、市場で金利変動リスクが顕在化した際にも破綻リスクは相対的に低いと考えられます。
現在の日本の金融システムは安定していて、我が国で米国で発生しているような金融不安がすぐに顕在化する可能性は極めて低いと言えます。
しかしながら、市場からの資金調達ができない中小企業経営者には、低預貸率の金融機関が孕んでいるリスクを把握して、安定した経営基盤を有している金融機関をメインバンクに据えていく必要があるのです。