【中小企業の銀行対策】「担保があるから融資を受けられるはず」が幻想である理由とは?
1 銀行融資の三要件
今日は、中小企業が金融機関から融資を受ける際に提供する担保について考えてみることにします。
中小企業経営者から金融機関を見た時に、「担保を取れるなんて、羨ましいなあ」とふと感じることがあるかもしれません。
一般に、我が国での商取引は性善説に基づいた信用取引で成り立っています。
製品・商品・サービスを納品、提供して、その後、請求書を出して、銀行振込や集金、手形を受け取るといった形で、売掛金を回収します。
役務を提供して初めて、請求するというのは、「相手がちゃんとお支払いしてもらえる」という性善説が大前提です。
諸外国の商取引では、そのような性善説はとられていないので、基本は「キャッシュオン」です。
性善説の上で商取引がなされている我が国は、つくづくありがたいことだなあと感じてしまいます。
しかしながら、「例外的に」ではありますが、相手が倒産してしまったり、場合によっては今だに取り込み詐欺のように、売掛金が焦げてしまうことがどうしても起こってしまいます。
それ故、中小企業経営者からすれば、信用保証協会の保証付や連帯保証人、担保を取れる金融機関は、「楽な商売やなあ・・・」と思えてしまいます。
他方、金融機関(預金等受入金融機関)は、広く一般から預金を集めて、それを原資に融資をしているので、不良債権を作るわけにはいかないという事情があります。
かつて多くの金融機関が不良債権を抱えて、経営が不安定になったことがありました。
破綻に追い込まれたり、国有化された金融機関が出現しました。
金融機関の経営が不安定になると、一般の預金者に動揺が広がって、社会不安が世の中を覆います。
そのようなことが起こらないためにも、金融機関は不良債権を発生させないよう、与信判断を行う際には、
1 資金使途
2 返済原資
3 保全
この3要件を最重要視します。
次に、この3要件について考えてみます。
2 金融機関は回収見込みのない融資は取り組めない
融資の三要件の内、1つ目の「資金使徒」とは、おカネの使い道です。
機械を買うのか、土地を取得するのか、売上増に伴う増加運転資金なのか、はたまた、決済資金のための後ろ向き資金なのか、融資を受けたお金が何に使われるかが明確でなければなりません。
間違っても、機械を買うための設備資金なのに、機械を買わずに運転資金に充ててたことが判明したら、「資金使徒違反」と金融機関が見做して、一瞬、一撃で金融機関からの信用が失墜します。
2つ目の「返済原資」とは、返済が可能であることです。
現状のフリーキャッシュフローが既往の借入金を含めて返済が可能でなければなりません。
フリーキャッシュフローが不足するのであれば、短期間で収益を改善し、返済原資を創出できる見込みが立てることが必要です。
3つ目の「保全」は、もしも融資が焦げた時に、回収する手段があることです。
信用保証協会の保証が付くのか、連帯保証人の資力はどうか、不動産担保の担保余力はどうかといったところが審査の対象です。
逆に言えば、いくら担保余力があっても、資金使途が妥当でなかったり(例えば、会社の規模の割に設備投資が過剰ではないかと疑われる場合等)、慢性的なキャッシュフロー不足である(いくら試算表上で利益が出ていても、資金繰り表上では資金有高が減少の一途となっている場合等)場合は、金融機関としては与信を見送らざるを得ません。
金融機関としては、回収見込みのない融資を強行することは、背任に当たります。
営業店が感情的に融資を実行した後、不良債権化した場合には、決裁者も、支店長、次席、役席、担当者も無傷では済まなくなります。
貸さぬも親切、とはよく言ったもんです。
このように、中小企業経営者も大変な仕事ですが、金融機関役職員もコンプライアンスだらけで神経をすり減らす毎日です。
中小企業経営者は、金融機関の組織特性と与信判断のプロセスをしっかり理解した上で、担当者の事情も斟酌しながら、メイン行以下、取引金融機関各行との信頼関係を構築していく必要があるのです。