【中小企業の銀行対策】「一行取引」の是非を考える

1 中堅・中小企業の銀行取引の実態

売上高然り、従業員数然り、ある程度の事業規模の会社の場合、資金調達の幅を広げるため、複数の金融機関と融資取引を行なっています。
そこには、暗黙のうちに、A行がメイン、B行がサブ、C行以下は、メイン、サブに協調、というのが理想的な銀行取引です。
弊所が拠点を構える八尾市始め、大阪府内では、西日本中の地銀、第二地銀や東日本の有力地銀が乱立していますが、各金融機関では、特定の業種に融資が集中するのを避けます。
例えば、融資先がトヨタ自動車であっても(おそらく限りなく貸倒リスクはゼロなのでしょうが)、超大口先になってしまってはリスク分散が不十分です。
未曾有の災害や、場合によって国家間の紛争が勃発するリスクを金融機関としては排除できないので、優良先であっても突っ込み過ぎないというのが金融機関のセオリーです。
逆に言えば、X銀行では対応できないような資金でも、リスクを別に見るY銀行ならば、追加融資を受けることができるかもしれません。
このため、特に、一定程度の事業規模を有する会社は、適度に複数行との取引をしておくのが肝要です。

2 小規模な中小企業、小規模事業者の銀行取引はどうなのか?

翻って、中堅よりも小さな中小企業や小規模事業者の銀行取引はどうなっているでしょうか?
資金需要の少ない現金商売ならば、常日頃の銀行取引は預金取引だけで、融資を受けているのは政府系日本政策金融公庫のみといったケースも多いようです。
また一定の資金需要があったとしても、政府系以外は、一行取引という会社も少なからず存在します。
小さな中小企業、小規模事業者にとって、一行取引の是非について考えてみることにします。

確かに、一行取引であれば、メイン行そのものなので、通常であれば、荒くたいことはしません。
また「資金ショートしてしまう」という後ろ向きの資金需要に関しても、一行取引のメイン行は「他行へ話してみてはどうですか?」などとご無体な言い方はしないはずなので、精一杯、支援してくれるはずです。
他方、一行取引の場合、他行との競合がないため、レートは高めになってしまいがちです。
一行取引の場合、おそらく創業当初からの取引である可能性が高いため、他行が新規融資をねじ込んで来たとなれば、一行取引のメイン行の担当者は「社長、水臭いわ。なんでうちに真っ先に声かけてくれへんのですか!」と信頼関係にヒビが入りかねません。

このように、一行取引にはメリット、デメリットが共存します。
一行取引がいいとか、悪いとか、一概には言えない、というのが本当のところです。
ただし、確かに言えることは、一行取引だろうが、複数取引だろうが、メイン行を筆頭に、常日頃から金融機関担当者とコミュニケーションを深めることが大切です。

今年の金融機関営業日は12月30日が最終です。
中小企業経営者の皆さん、来週あたり、年末対応と年越し準備が完了したら、「年末のご挨拶」にかこつけて、自社の近況報告にメイン行、サブ行と、順番にお邪魔してみてはいかがでしょう。

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