【中小企業経営者の心得】目先は大切。しっかりと先も見渡そう

1 経営改善中の経営者の目線は近視眼的だ

収益が厳しかったり資金繰り余力が低下している中小企業経営者を見ていると、精神的な余裕が感じられせん。
当たり前と言えば当たり前で「月末の手形は落とせるのか?」、「来月の給料は足りるのか?」といった悩みを抱えた経営者は、「笑って前を向いて行け」と言われたところで、それは無理な話なのかもしれません。
とはいえ、経営者である以上、社外にも社内にもおいそれと消耗した姿を晒すわけにはいきません。
特に融資を受けている金融機関に対しては、「当社はしっかりやっているので、ご心配は要りません」という姿勢を崩してはいけませんし、ましてや、従業員にキレるようなことがあっては修羅場となってしまいます。

実際、経営改善途上の中小企業経営者に自社のSWOT分析をしてもらうと、内部要因については強みがほとんど出てこなくて、弱みがわんさと出てきます。
他方、外部要因となると、不思議と、機会も脅威もなかなか出てきません。
機会はラッキーなことなので放っておいてもラッキーに預かれるのですが、脅威に気付きがないのは大きな問題です。
なぜならば、自社が相手としている商圏や市場が見えていない証左なので、見逃すわけにはいきません。
目先はもちろん大切なのですが、中小企業経営者が近視眼的になることほど、恐ろしいことはありません。

2 産業構造の大転換をガソリンスタンド業界を例に考える

そう遠くない過去において、中小企業レベルであっという間に産業構造が変化した例として、ガソリンスタンドのセルフ化が挙げられます。
従前のガソリンスタンド業界は、元売直系・商社系、地場1次店、地場2次店という3層構造となっていました。
地場2次店は親密な地場2次店から仕入をしていましたが、安売り競争の激化の果て、セルフスタンドへの転換が元売直系・商社系で一気に進んだ一方で、セルフ化への設備投資ができなかった地場2次店はその多くが廃業・倒産に追い込まれました。
北出が拠点を置く大阪府八尾市内とお隣の大阪市内では、めっきりガソリンスタンドの数が減ってしまって、特に大阪市中心部ではガソリンスタンドがなかなか見当たらない程です。
家賃を含めた物価の高い都心部では、絶対的な資金力を背景とした元売直系と商社系のみが勝ち残った格好です。
さらに、コロナ禍となれば、AI、脱炭素、感染予防・非接触といったキーワードを大義名分として、無人・省力化が加速して従来型の低収益産業が一気に駆逐されていく可能性が高まりました。
煽るつもりはありませんが、中小企業経営者にとってみれば、「明日は我が身」です。

3 目線を上げて見渡さないとあっという間に足をすくわれる

産業構造の大転換が起こっていくのに当たって、中小企業経営者が備えなければいけないことが2点あります。
1点目は、「外部要因、中でも脅威を常に意識する」ことです。
産業構造の大転換は、中小企業単体ではどうにもならない巨大な津波なので、津波に立ち向かってはダメで、回避するに限ります。
2点目は、「来るべき設備投資に備えて、金融機関から設備資金を調達できるよう会社に筋肉質に転換する」ことです。
産業構造の大転換の際、必要となるのが設備投資で、上記のガソリンスタンド業界がその典型例です。
赤字で債務超過では、必要となる設備資金の調達はできません。
経営改善途上にある中小企業は、来るべき産業構造転換に備えて、PL黒字化、BS実質債務超過解消を急ピッチで成し遂げなければなりません。
過去の成功体験は捨てて、目線を上げて見渡さないとあっという間に足をすくわれてしまいます。
中小企業経営者は、グズグズ言わず、客観的視点で会社をアップデートしていく必要があるのです。

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