【中小企業の銀行対策】不動産関連向け融資の多い金融機関に留意しておく理由とは?

1 金融機関のディスクロージャー誌を斜めに読んでおく

今日は、中小企業の銀行対策として、不動産関連向け融資の多い金融機関が要注意な理由について考えてみます。
金融機関は、外資系を除けば、3月決算です。
金融機関役職員は、決算期とゴールデンウィークの店頭の繁忙期が終わって、少し静かなシーズンに入っています。
一部の金融機関は、持株会社方式で経営統合しているため、銀行単体の有価証券報告書を見ることができませんが、株主総会が終わる7月には2023年3月期のディスクロージャー誌が発行されます。
ディスクロージャー誌の記載事項は、銀行単体の決算書の要旨が記載されているだけではなく、国内基準の自己資本比率、不良債権の金額、その与信費用、担保等による保全状況といった不良債権に関する情報や、業種別の与信残高などの情報に接することができます。
ディスクロージャー誌は、金融機関営業店の窓口で閲覧できる他、公式サイトでもアップデートされているため、融資を受けている当事者や預金者に限らず。誰でもアクセスすることができます。
幸いにして、ここ最近の米国の金融機関と違って、日本の金融機関の経営は総じて安定していて、バブル崩壊後やリーマン危機のような金融不安は少なくとも表立って出てはいません。
金融不安は恐ろしいもので、「X銀行が危ないらしい」となれば、預金者は金融機関店頭に殺到するだけではなく、最近では、ネットバンキングで瞬時に預金が流失してしまいます。
金融機関は、預金(金融機関の預金は負債、つまり借金)の急速な流出に備えて、保有している債券を売却して資金化する(債券価格の下落は金利の上昇を誘発する)だけでは足りずに、優良な融資先からの融資を回収してしまうので、金融不安はあっという間に拡大してしまいます。
場合によっては、健全な金融機関でさえ、資金不足によって預金の払い出しに応じることができなくなり、経営破綻に追い込まれかねないのです。

2 不動産関連融資のリスクとは?

次に、金融機関の不動産関連融資のリスクについて考えてみます。
今日、ディスクロージャー誌の中で、注目して頂きたいのが、業種別の与信残高(総与信に占める割合)です。
中でも、不動産関連向けの融資がどれだけ出ているかについて注目してみます。
不動産関連融資の典型的な例が「開発型資金需要」です。
例えると、なだらかな丘陵地を重機でならして平地にして、区画を区切って宅地として分譲して一般施主に売却、一般施主がそこに住宅を建てるという場合です。
通称、ミニ開発と呼ばれる10区画いないの小規模な開発物件もあれば、数百の単位で分譲する大型開発物件もあって、その規模は様々です。
土地の種目が山林の土地を開発して、一般施主に売却できれば、不動産開発業者としては莫大な粗利を稼ぐことができます。
人気のあるエリアや、駅近物件であれば、粗利の率は更に上昇します。
言葉は悪いですが、文字通り「錬金術」で、融資を出す金融機関としては、一般的にそこそこの金利をいただけるだけではなく、融資残高も手っ取り早く稼ぐことができます。
開発物件によれば、融資額は数十億円に達します。
土地の分譲ができて、一般施主への売却が進む度に、金融機関は融資を内入れすることで返済原資を明確化できる他、底地には根抵当権を設定するので、保全も明かです。
単純に、金融機関の担当者としては、稟議が書きやすい融資案件ということができます。
他方、市中の金利が急上昇して(今の現実としてはちょっと想定しにくいが)住宅ローンに一般施主が躊躇したり、そもそも開発業者が思うように物件を捌くことができなければ、開発業者としては物件が不良在庫となってしまいます。
金融機関としても、開発業者が物件を売り切ることができなければ、不良化した商品土地に対応した融資の返済原資を失ってしまいます。
実は、金融機関にとって不動産関連融資には不良債権化するリスクがついて回るのです。
さらに問題なのが、分譲した物件が予想以上に人気が高く、開発業者の想定以上の金額で売却でき、売却益を手に入れたとしても、金融機関の回収額はあくまでも当初の融資実行額が限界です。
金融機関からすれば、不動産関連融資は100点満点で当たり前、商品土地が残ってしまえば不良債権というリスクを負ってしまいます。
過去の農林系金融機関の旧住専向け放漫融資がもたらした金融危機を忘れてはなりません。
北出は、不動産関連融資が全ていけないとは言いません。
大阪の中心部は、コロナ危機が去り、インバウンド需要を見込んだホテルの建設ラッシュで、そのような建設ラッシュは、万博、IRを見据えた大きな経済効果をもたらしてくれることは間違いません。
中小企業経営者は、不動産関連融資の功と罪をしっかりと認識した上で、メインバンクの不動産関連融資への依存度について注目をしておく必要があるのです。

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