【中小企業の銀行対策】<脱・個人保証>への道その2

1 <脱・個人保証>を更に掘り下げる

一昨日のブログで、個人保証外しと事業承継との関係性について、昨日のブログで「脱・個人保証」と会社・個人の分別管理徹底について考えました。
おそらく、「脱・個人保証」について中小企業経営者にとって重大な関心事だと考えられるため、今日は、今年最後のブログで更に「脱・個人保証」を掘り下げていきます。

言うまでもありませんが、既に金融機関が融資先企業の代表者から頂いている個人保証は、貴重な保全の手段です。
「経営者保証ガイドライン」があるからといって、金融機関側から「社長、個人保証外しますわ!」とは99.9%なりません。
とはいえ、金融機関側の事情は金融機関一律とは必ずしも言えません。
個人保証外しに前向きな金融機関もあれば、そうではない金融機関も存在します。
個人保証外しに前向きな金融機関とそうではない金融機関の差はどのようなところにあるのか考えます。

一昨日のブログの内容と少し被るところがあるのですが、乱暴に、誤解を恐れずに言えば、規模の大きな金融機関の方が、個人保証外しに前向きと言えます。
その理由は、大企業との取引実績が多く、上場企業やそれに準ずるような会社の雇われ社長に「個人保証をお願いします」と言うわけにはいかないからです。
大規模な金融機関の方が、担保や保証に依存しない融資取引が多いと言うのは純然たる事実なので、個人保証に依存しないことに慣れている傾向があります。
また大都市、例えば、大阪市北区、西区や中央区では、「大昔から船場で商売してます」的な超老舗・超名門企業が確かに存在して優良不動産を保有していますが、一方で新興市場に上場しているような後発の成長企業であっても、本社は賃借であるケースがほとんどです。
平たく言えば、大都市部の金融機関ほど、担保や保証に依存しない融資取引を行わざるを得ないという実態があるのも事実です。

他方、小規模な金融機関ほど、保全を重視する傾向が強いため、「まずは保証協会に打診、社長の個人保証は当たり前、他に出せるような担保物件はないですか? 不動産だけではなく、PanasonicとかToyotaとか、上場企業株とか何でも良いです」なんて話になりがちです。
また地方の金融機関の場合、地方であるが故に、会社と代表者一族で一定の不動産を所有しているケースが多いため、どうしても「担保をください」となってしまいます。

2 金融機関の方針として、「脱・個人保証」を打ち出している金融機関が存在するようになってきた

例えば、なのですが、弊所が拠点を於いている八尾市にも支店を置く南都銀行(本店奈良県奈良市)の場合、経営者の個人保証への依存度が地方銀行平均よりも大きく下回る実績を既に積み上げています。
南都銀行は、地元奈良県では「南都王国」と称されるほど、ブッチギリの高いシェアを有していますが、京都との比較では観光産業がやや弱かったり南部の林業が長期低迷するなど、奈良県内地場産業の資金需要がこれ以上見込めないと判断したのか、奈良県と隣接する大阪府東部や大阪市内に積極的に営業展開しています。
当然、大阪府内が元々の本拠地である金融機関との熾烈な融資獲得競争の中で、「個人保証なんて言ってる場合やないやろ」となったことは想像に難くありません。
結果として、全国の有力地方銀行の中でも、金融庁的には「優等生」です。
北出は南都銀行の回し者では決してありませんが、このような金融機関を味方につけておけば、既存のメインやサブ行にもいい意味での刺激にもなるはずなので、中小企業経営者としては「すぐに南都銀行から融資を」とはなりませんが、南都銀行に限らず、「脱・個人保証」に積極的な金融機関を日頃から注目することは決して悪いことではありません。

3 「脱・個人保証」の大前提をもう一度確認する

このように、「脱・個人保証」を巡っては、ここ関西でも少しずつ前進しています。
ただ、「脱・個人保証」には、昨日から申し上げている「会社と個人の厳格な分別管理」に加えて、実態ベースでの安定した株主資本(自己資本)が必要不可欠です。
実質債務超過なのに、「脱・個人保証」をお願いしますと言ったところで、金融機関は相手にしてくれません。
毎期、着実に利益が出せていること、税引き後当期純利益を社外流出させることなく内部留保を蓄積することで実現できる安定したBSが「脱・個人保証」の大前提です。

安定したBS、充実した内部留保は、「脱・個人保証」のためだけではなく、想定外の脅威に対応する最強の盾となります。
阪神淡路や東日本大震災に代表される激甚災害、リーマンショックのような金融危機、そして新型コロナウイルス感染拡大のような疫病などなど、中小企業経営の外部環境は脅威だらけです。

2022年、まもなくおしまいです。
今年も凄まじい一年でしたが、来年は卯年。
来たる2023年も弊所では、お客様の会社の未来のため「脱・個人保証」をこだわって、手掛けていく所存です。

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