【中小企業の銀行対策】業種特性と相場感によって適正な在庫管理のあり方が激変する理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、業種特性によって理想的な在庫管理が変わる理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 一般論として在庫は少ない方が芳しい
2 在庫管理は経営者が直接関与すべき業務である
1 一般論として在庫は少ない方が芳しい
「適正な在庫はどのくらい?」
中小企業の経営者の永遠の悩みです。
単純にキャッシュフローの観点からすると、在庫を始めとした資産の増加は現預金を減らしてしまうので、一般論としては、在庫は少ないに越したことはない、というのが教科書的な答えです。
ところが、実際の製造現場や営業の最前線ではそんな単純な話にはなりません。
製造業の中でも工作機械に代表される一品ものの受注生産の場合、受注を受けてからの納期が一定程度の期間を要するため、一言で在庫といっても、倉庫や工場の中には仕入れたばかりで手の全く付いていない原材料のものから、製造加工中の仕掛品、はたまた納期寸前の限りなく製品に近いものまで多種多様に存在します。
スーパーに納品しているメーカーや問屋・商社の営業現場は、スーパー店頭で欠品が発生してしまうとスーパーにもそのお客様の一般消費者にご迷惑をかけてしまうので、欠品に陥らない程度の最小限の在庫は保有せざるを得ません。
また問屋や商社の場合、お客様から「大急ぎで納品してよ!」というニーズに応えなければなりません。
潤沢な在庫を確保していることが問屋や商社の存在意義でもあるので、潤沢な在庫を確保しておく必要があります。
一方で、お寿司屋さんのような生モノを扱うような業種ですと、仕入れ過ぎによって在庫の消費期限が切れてしまうと、在庫の廃棄ロスが発生してしまいますが、仕入を抑制し過ぎてしまうと「今日は寿司でも食うか」とちょっと気合を入れてきたお客さんから見れば、ショーケースが空っぽのお寿司屋さんには「次はないな。コレっきりや」と幻滅されてしまいます。
家電た自動車のような定期的にモデルチェンジがあるような商品・製品の場合には、新しいモデルの登場によって、機能としては何も劣っていないにもかかわらず、時価は大幅に下落してしまって、「含み損」が発生してしまいます。
このように、長持ちするのか劣化しやすいのかが在庫管理の鍵の一つでもあります。
2 在庫管理は経営者が直接関与すべき業務である
上で見た通り、在庫は少ないのに越したことはありませんが、その業種特性に加えて、在庫単価の現在の時価から将来にわたる相場感までも変数となるため、適正な在庫管理といったところで、「一概には言えない」というのが実際のところです。
コロナ禍の半導体のように、明らかに需給が逼迫して相場の先高感が見通せる場合には、金融機関から運転資金を調達して支払利息を払ってでも、在庫の確保に動かねればならない局面が存在します。
昨今中古車業界を賑わせている業界大手が手持ちの在庫を放出する観測があるのであれば、需給は短期的に急速に緩む可能性が払拭できないため、急ぎ手仕舞いして在庫が抱え得る含み損を最小限度に留める必要が出てくるかもしれません。
このように、その局面局面によって、適正な在庫水準は変動します。
時価のあるような素材や製品をいかように仕入れるかというのは、もはや現場で判断できる領域の範疇ではありません。
円安が更に進み、ガソリン価格も強含むことが予想される今だからこそ、在庫管理は経営陣が積極的に関与する必要があるのは明確です。
中小企業経営者は、在庫の調達が会社び資金繰りに直結することが肝に命じて、トップダウンで適正な在庫管理を徹底する必要があるのです。