【中小企業の銀行対策】金融機関にとって不良債権がNGである根本的な理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関にとって不良債権がNGである根本的な理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 金融機関はずっと不良債権との闘いに明け暮れてきた
2 不良債権NGの根本的な理由は一般預金者目線にある
どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関はずっと不良債権との闘いに明け暮れてきた
「失われた30年」というフレーズが言われるようになって久しくなりました。
平成の初頭にパンパンに膨れ上がったバブルが弾け、不動産価格が下落、担保価値が急落して、金融機関の不良債権は大幅に増えました。
金融機関の営業店でも、外回りも融資係も不良債権に立ち向かわなければなりませんでした。
いくつかの金融機関は破綻し、国有化され、救済合併もされました。
「失われた30年」は、金融機関にとっては、不良債権との闘いだったのです。
「失われた30年」を経て、金融緩和で資金が市場にジャブジャブに供給されたことで、金融システムは安定し、「危ない金融機関リスト」と言った類の週刊誌記事も一掃されました。
金融検査マニュアルも廃止され、融資先の管理は金融機関に委ねられました。
そのような中にあっても、依然として、金融機関では、融資先をモニタリングして、格付け・債務者区分を必要に応じて改訂しています。
金融機関の不良債権との闘いは、今でも延々と続いているのです。
2 不良債権NGの根本的な理由は一般預金者目線にある
それでは、金融機関がこれほどまでに不良債権を忌み嫌うのか、根本的なお話をしてみます。
一般企業においても、お客様が破産や民事再生手続となった場合には、売掛金や受取手形は不良債権となってしまいます。
不良債権発生は、場合によっては、資金繰りに支障をきたしたりして、事業継続にも影を落としかねません。
他方、金融機関においては、不良債権の金額がディスクローズされるなど、不良債権がより大きくクローズアップされます。
金融機関が不良債権を忌み嫌う理由を、金融機関のビジネスモデルから考えてみます。
金融機関は不特定多数の一般預金者から預金を集めて、預金を原資として、企業や個人に融資をします。
融資をして得られる貸出金利息が一般企業の売上高、預金者に支払う預金利息が一般企業の売上原価に相当します。
貸出金利息と預金利息の差額が利鞘であり、一般企業の売上総利益に該当します。
金融機関に大口の不良債権が発生すると、ディスクロージャー誌を通じて、一般預金者に大口不良債権の発生が伝わります。
大口不良債権の発生は本来、回収できるはずであった貸出債権が不良化して回収できなくなってしまうので、一般預金者への預金の払い出しに支障が出かねません。
かつての旧兵庫銀行や木津信用組合のように、一般預金者が店頭に殺到して、取り付け騒ぎが起こってしまう可能性があります。
金融機関が不良債権の発生を忌み嫌う最大の理由が、一般預金者に不安を与えてしまうことなのです。
中小企業経営者としては、メインバンク担当者に「うちは不良債権にはなってないよな?」と質問しても本当のことは言えないのですが、実態ベースのBSの資産勘定に費用性のものがあったり資産性が認められないような資産が含まれていて、実質債務超過に陥っていないかを推定することは可能です。
中小企業経営者は、金融機関が不良債権発生を忌み嫌っていることを肝に銘じて、安定した収益体質と「綺麗なBS」を実現し、「正常先」を維持するため、常日頃から経営努力を怠ってはならないのです。