【中小企業の銀行対策】「支店長を出せ」が禁句である理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、「支店長を出せ」が禁句でる理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 金融機関の組織特性を知る
2 担当者の顔を潰すようなことをしてはいけない
どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関の組織特性を知る
弊所が初めてお邪魔をする中小企業で、経営者の方からヒアリングをしていると、取引金融機関、中でも、メインバンクとうまく対話ができていないケースが散見されます。
弊所にお声がけいただけるからには、経営者自身が「今のままではいけない。メインバンクとの関係を修復したい」という問題意識を持っておられるのですが、実際には「どうやって手打ちをしたら良いかわからない」というのが実際のようです。
中小企業と金融機関との組織としての決定的な違いがあって、そこを相互に理解しないと始まらないと北出は考えています。
中小企業、中でもオーナー経営であれば、極端な話、筆頭株主で代表権のある社長は、会社の絶対権力者です。
従業員は、社長に忖度して、会社に問題点があったとしてもそれを面と向かって指摘をするような従業員は基本的にいません。
従業員がオーナー経営者に楯突くのは、いつでも辞表を出す覚悟を決めている場合だけです。
会社の頂点にオーナー経営者がいて、あとは部長だろうが、平社員だろうが、基本フラットで、フライパンの蓋のような組織イメージです。
ところが、金融機関の組織特性は真逆と言っても過言ではありません。
北出は、金融機関の組織特性は「まるで軍隊」であると信じていて、それがいい悪いの問題ではなく、組織はトップダウンです。
営業店(支店等)であれば、支店長が人事権を持っていて、次席(次長や副支店長)、役席(課長や支店長代理)、役職なしのペーペーとピラミッド型の組織です。
営業店の上部には、本部組織が機能していて、本部から達せられる営業方針などは営業店では絶対遵守です。
オーナー経営者が、金融機関、特に、メインバンクとガッツリ関係を結ぶのであれば、まずは相手方を知ることから始める必要があります。
2 担当者の顔を潰すようなことをしてはいけない
中小企業の場合、メインバンクの担当者は、比較的若手で、非役職者に当たる可能性が高くなります。
もしも、課長や代理、ましてや次席自らが担当する場合は、よっぽど優良先か、逆に経営改善局面でメインバンクがなんとか支えなければいけないようなケースです。
担当してくれる非役職者(係長や支店長席付など)が担当する場合、彼ら、彼女らには、何の権限もありません。
権限のない彼ら、彼女らにキレても、お互い嫌な思いをするだけで、融資を受ける中小企業にとって、何のメリットもありません。
他方、「権限のないペーペーのお前らには用はない、支店長を出せや」を啖呵を切ったところで、おいそれと支店長が出てくることはありません。
そもそも、担当者だけが、メインバンクの中で、融資を受けている中小企業を応援してくれる立場です(もちろん、事務的にやり過ごすだけの担当者がいないとも限りませんが)。
「支店長を出せや」は、メインバンクとの信頼関係を著しく悪化させるだけではなく、結果として、担当者の顔を潰してしまうことにもなります。
「支店長を出せや」と揉めてしまうと、担当者は、直属上司の役席だけではなく、次席、部店長(支店長等)からも「お前、何やってんのや?」とペケをつけられてしまいます。
このように、中小企業経営者は、金融機関の組織特性を正しく理解をして、担当者との信頼関係を良化させて、必要な資金をタイムリーに調達するため、、担当者が気持ちよく稟議を起こしてくれるような関係を作っていくことが必要なのです。