【中小企業の銀行対策】銀行与信所管部門から嫌われない決算書と試算表のあるべき姿とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、銀行与信所管部門から嫌われない決算書と試算表のあるべき姿について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 まだまだ定性情報より定量情報が主流である
2 PLよりもBSを重視する
どうぞ、ご一読下さい。
1 まだまだ定性情報より定量情報が主流である
金融機関の与信判断の材料として、数字(定量情報)以外で、数字に表れてこないような会社の情報(定性情報)を重視することを金融機関は表明しています。
定量情報とは、決算書や試算表、資金繰り表等、数字で押しはかることができる情報です。
それに対して、定性情報としては、融資先が有している技術とか、レベルの高い職人さんの腕前とか、経営者のお人柄といった文字通り数字では表現し切れない情報のことを言います。
とはいえ、実際の金融機関の与信判断に当たっては、まだまだ定量情報が圧倒的に重視されます。
たとえば、金融機関営業店の担当者が、「あの社長はとても良い人なので、30百万円、信用でいきたいと思います」といったところで、支店長や本部の与信所管部署(融資部とか審査部など)から、「そんなもん、お前、会社、赤字で債務超過やのに、信用で行けるわけないやろ。お前、アホちゃうか」と担当者が論破されてしまい、担当者も融資先も「撃沈」です。
確かに、金融機関としては、一般の預金者から幅広く預金を預けてもらっているので、安定的に預金の払い戻しに応じるためにも、いくら定性情報を重視するといっても、不良債権が生まれてしまっては本末転倒なので、金融機関が定量情報よりも定性情報を重視するのは、当たり前と言えば当たり前です。
このため、もちろん、社内で技術者や職人を育成したり、経営者自身がさまざまなスキルを向上させる努力を続けることは当然ですが、決算書、試算表をきれいにすることは経営者として当然です。
決算書、試算表の精度を高め、信頼性を向上させることは、中小企業が安定的に資金調達が出来、金融機関の債務者区分を正常先として維持し続けることは、非上場の中小企業にとっては死活問題なのです。
2 PLよりもBSを重視する
中小企業経営者が、決算書や試算表が手元に届くと、真っ先にPL(損益計算書)に目が行きます。
期間中、会社が儲かったのか、損失が発生していないかが経営者の最大の関心事です。
これは会計事務所も同様で、「売上」ー「費用」=「所得」という単純なモデルによって、法人税が決まってくるからです。
ところが、金融機関の与信所管部署は、もちろん、一定の期間中の損益も重視しますが、それよりも融資先の「安全性」に最も重きを置くので、BSをより重視します。
感覚的には、金融機関の与信判断(自己査定も含む)では、BS 70%>PL 30%位が体感的です。
特に、実態のない資産には、厳しい視線が注がれ、自己査定では実態BSから差っ引かれてしまいます。
たとえば、オーナー一族向けの貸付金、仮払金、立替金などです。
また、費用性が認められる投資等の勘定や繰延資産もいわば不良資産です。
特に、オーナー一族向けの貸付金、仮払金、立替金が計上されていて、過去1年くらいの間で長期の与信が実行されていたりすると、金融機関が実行した長期の資金が会社から個人に転貸されていて、会社を経由して個人に流出しているように見えると、金融機関の与信所管部署としては、今後のニューマネーへの与信判断には慎重にならざるを得なくなってしまいます。
仮に、オーナー一族向けの貸付金等が計上されていれば、毎月金額を決めてオーナー一族から会社に返済していくことを金融機関に表明して、毎月試算表上でも、貸付金が少しずつでも圧縮できていることを示す必要があります。
このように、PLも当然ですが、BSも身綺麗にしておくことは、金融機関の支援継続には極めて重要な要素です。
中小企業経営者は、中小企業といえども、会社は社会の公器であることを再認識して、間違っても、会社を私物化するようなことは厳に慎まなければならないのです。