【中小企業の銀行対策】貸付金が中小企業を窮地に追い込む根本的な理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、貸付金が中小企業を窮地に追い込む根本的な理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 貸付金の本質は使途不明金である
2 貸付金勘定は金融機関の審査の支障になる
どうぞ、ご一読下さい。
1 貸付金の本質は使途不明金である
12月も中旬で、忘年会真っ只中です。
新型コロナウイルス感染症が猛威を撒き散らした時代を経て、ようやく、コロナ前の日常が取り戻せてきています。
中小企業経営者は、社内のみならず、社外との交流が盛んな方が多いので、忘年会のお誘いを断りきれない経営者も少なくありません。
社外の人脈を拡げることで、思わぬビジネスチャンスに恵まれることもあり得ますし、経営者仲間から刺激を受けることも多いにあり得ます。
物価高の最中ではありますが、中小企業経営者が景気を回すためには、忘年会に積極的に参加することは決して悪くはありません。
ただ、忘年会に出席して、飲み食いをするとなれば、会社の経費で賄うのか否か、非常に微妙なケースもないわけでもありません。
大切なお取引先のキーマンを接待する際には、そこそこのお店にご案内する必要もあるので、接待交際費が中小企業経営者に必要なことは重々わかります。
ところが、接待交際費をはじめ、会社の経費は、あくまでも営業上で必要な支出であることが大前提です。
1軒目の割烹はとにかく、2軒目のおねえさんがいるお店の飲食代を接待交際費として認められるかは、非常に微妙なところです。
会社の経費として認められない支出を会社から支払うと、実質的に「使途不明金」になってしまいます。
経費として計上できないとなれば、会計事務所としても、処理に困ってしまいます。
そのようなケースで登場するのが、資産勘定の「貸付金」です。
貸付金の本質はズバリ使途不明金そのものです。
経営者は役員報酬を会社から受け取っているので、会社に領収書をつけ回したり、法人カードで決済することなく、使途不明金になりそうな支出はポケットマネーで賄うことが大前提です。
経理担当者としても、「社長、こんな領収書、会社の経費で落としてるわ」となれば、会社全体のモラルと士気の低下に直結します。
いくら、オーナー経営の中小企業といっても、経営者が会社を私物化するようなことはあってはならないのです。
2 貸付金勘定は金融機関の審査の支障になる
貸付金の発生と増加を最も嫌うのが融資をする取引金融機関です。
経営者向けの貸付金の発生・増加を取引金融機関が嫌う根本的な理由が、会社のおカネを経営者が流用しているように見えてしまうことに尽きます。
例えば、事業承継の際、自社株を経営者の息子が買取、継承する際に、資金が必要になって、やむなく会社から資金を借り入れるようなケースであれば、事情が事情なだけに取引金融機関の理解が得られます。
そもそも、金融機関は、長期運転資金が在庫の仕入、納品までのリードタイムにかかる人件費や外注費、債権回収までの立替資金に充当されることを疑いません。
ところが、直近で、長期運転資金を実行して、その後、試算表、決算書上で貸付金が発生・増加していたら、金融機関が融資した資金が経営者個人に流出しているようにしか見えません。
これでは、最悪の場合、「背任」だと言われても仕方がないくらいのお話で、試算表を目にした支店長がキレてしまいかねません。
「あの社長、金遣い粗いから、きいつけとけよ。うちはもう撤退、回収。ニューマネーは出さんからそのつもりでおれよ」と支店長が担当者に断言してしまったら、おおごとです。
運転資金を実行したら、またその資金が経営者個人に貸付金として流出してしまうことを取引金融機関が懸念するようなことになれば、増加運転資金等本当に必要となる資金の調達も難しくなります。
万が一、貸付金が試算表や決算書に計上されてしまった場合には、毎月定額で会社に返済していくことを取引金融機関に明確化して、着実に貸付金を返済する実績を積み重ねて、実態BSの健全化を目指す必要があります。
このように、貸付金の存在は中小企業を窮地に追い込んでいきます。
中小企業経営者は、会社のトップとして高いモラルを持って、誠実に会社の舵取りに邁進する必要があるのです。