【中小企業の銀行対策】試算表のアップデートを早めるべき理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、試算表のアップデートを早めるべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 取引金融機関に最新の試算表を提出する
2 最新の試算表によって自社の直近の業況を把握する
どうぞ、ご一読下さい。
1 取引金融機関に最新の試算表を提出する
北出が初めて、お客様の会社にお邪魔する時、まずは「直近の試算表を拝見させて下さい」と経営者にお願いをすると、時として、3ヶ月前の試算表が出てくることがあります。
「社長、この試算表、3ヶ月前のものですが、直近の試算表はありませんか?」とお尋ねすると、これが最新のものだということがなきにしもあらずです。
取引金融機関から試算表の提出を求められた時に、3ヶ月前の試算表を提出された金融機関の心証は、これだけでほぼアウトに近いと言えます。
トランプ関税、物価高、人手不足と中小企業を巡る内外の環境は厳しさを増し、かつ、大きく変動しています。
試算表が3ヶ月前のものでは、取引金融機関としても直近の業況を把握できず、与信判断にネガティブな影響を及ぼさないとも限りません。
試算表のアップデートとしては、前月の試算表が当月20日前後に出来上がるというのが中小企業の相場です。
試算表を作成するのにあたって、自社で会計ソフトを入力するケースもあれば、通帳の写し、請求書や領収書などをバサっと会計事務所に丸投げするケースもありますが、経理部門だけではなく、会社全体が試算表の早期アップデートに協力する必要があります。
営業部門が仮払金で渡された経費相当分の精算を後回しにすると、仮払金や立替金といった費用性の資産勘定が増えてしまい、実態ベースのBSを痛めてしまいます。
このため、経費精算は必ず前月中に行うなど、営業部門等の協力も必要です。
試算表をたかが試算表を片付けることなく、試算表は毎月の会社の成績表であることを経営者は認識する必要があります。

2 最新の試算表によって自社の直近の業況を把握する
上記のように、金融機関に最新の試算表を提出することが必要だと申し上げますと、あたかも試算表のアップデートは純粋な銀行対策のように見えてしまいます。
もちろん、取引金融機関に対して、直近の業況を定量的に伝えるという意味では、試算表は最も簡単で、王道な手段です。
ところが、本来、試算表をアップデートしなければならない理由とは、経営者自身が自社の直近の業況を把握することに他なりません。
前々月と比較して売上総利益が低下していたら、値引きがあったか、あるいは原材料や外注費が値上がっている可能性があります。
この物価高のご時世ですから、原材料の値上げは断続的に続いています。
人手不足から外注費も高くなっていることも想定されます。
販管費が増えていたら、突発的な支出がなかったかを点検することが必要です。
結果として、営業損益では減益になっていないか、あるいは赤字に転落していないかを確認しなければなりません。
営業損益で減益あるいは赤字に転落していれば、販売単価の見直しや経費の削減を急ぎ実施しなければなりません。
一旦、経営改善局面に陥ってしまうと、その後が大変です。
このように、試算表を仔細に点検することは、会社が経営改善局面に至る前に軌道修正を図るための重要なツールなのです。
最新の試算表の早期アップデートは、他でもなく、経営者自身のためなのです。
中小企業経営者の皆さん、経理部門から提出された試算表にサラッと目を通しただけでスルーしていませんか?
中小企業経営者は、試算表を重要な定性的要因のチェックツールであることを認識して、早期に試算表をアップデートできるような会社の体制を構築することが必要なのです。