【中小企業の銀行対策】メインバンクを最重要社外ステークホルダーに位置付けるべき理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、メインバンクを最重要社外ステークホルダーに位置付けるべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 非上場中小企業の最大の資金の出し手はメインバンクである
2 最重要社外ステークホルダーへの対応は社長の仕事である
どうぞ、ご一読下さい。
1 非上場中小企業の最大の資金の出し手はメインバンクである
世の中の大半の企業が中小企業であり、非上場企業です。
非上場であることによって、会社法監査や一般投資家向けディスクローズ等上場コストの負担はなく、上場企業としての最上級のコンプライアンスを求められる訳ではありません。
他方、上場企業であれば、広く、一般投資家から資金を募ることができます。
日本では上場できないような娯楽産業であっても、香港市場であれば上場可能で、低コストの資金を集めることができます。
非上場の中小企業の場合、資本性のある劣後ローンやベンチャーキャピタルからの資金調達手段はあるものの、劣後ローンやVCからの資金調達のハードルは高く、基本的には、金融機関から、運転資金や設備資金を調達するのが一般的です。
このため、非上場中小企業にとっての最大の資金の出し手はメインバンクであり、メインバンクとの信頼関係は、非上場企業にとっては、資金調達の生命線といえます。
我が国では、明治以降、多くの民間金融機関が登場して、上場、非上場にかかわらず、我が国独自のメインバンク制が一般化しています。
私の肌感覚からしても、業績が安定している企業であればあるほど、メインバンクとの関係が良好で、信頼関係が構築されていることを痛感しています。
また、メインバンクとの信頼関係が築けていれば、一時的な業績悪化時でも、メインバンクはしっかりと対応してくれます。
必要に応じて、他行との調整に前向きに取り組んでくれます。
特に、コロナ禍でサービス業等多くの中小企業が資金繰り余力が低下しましたが、金融機関から融資を受けたことがなかったような小規模事業者にとっては資金調達に支障が出ました。
金融機関としても、従来から預金取引のみであった小規模事業者からいきなり資金要請を受けても、決算書も初めて徴求するような状況では十分な対応が難しいかったのは当然です。
常日頃から、中小企業経営者・小規模事業者事業主がメインバンクとの信頼関係構築に注力することが重要なのは言うまでもないことなのです。
2 最重要社外ステークホルダーへの対応は社長の仕事である
このように、中小企業にとって、取引金融機関、中でもメインバンクは極めて重要な存在です。
このため、非上場中小企業とすれば、メインバンクを最重要社外ステークホルダーに位置付け、最重要社外ステークホルダーであるメインバンクとの対応は、経理部長や総務部長に丸投げするのではなく、社長自らが行うことが重要です。
上場企業であれば、株主総会の議長は社長の重要な仕事です。
株主総会の議長役と同様に、最大の資金の出し手であるメインバンクへの対応は社長マターです。
社長自らが対応するとなると、メインバンク担当者もそれなりにしっかりと対応せざるを得ません。
また、「言った、言わない」と言った類のトラブルも最小限度に止めることが可能です。
同時に、社長自身が、会社の数字に敏感でなければならなくなります。
試算表と資金繰り表を手にメインバンク担当者にモニタリングで報告する中で、メインバンク担当者から質問を受けた際に、「ええっと、ちょっと確認してみないと・・・」では社長の面目が立ちません。
国会の質疑で、資質に欠ける大臣が答弁に詰まって政府委員の助言を仰ぐような姿はみっともないとしか言いようがありません。
弊所では、お客様の中小企業経営者と取引金融機関へのモニタリング(業況報告)を行なっていますが、モニタリングを継続していくことで、お客様の経営者がどんどんスキルを上げていく姿を見ています。
中小企業経営者は、メインバンクへのモニタリング等の対応を自らが行うことで、自身のスキルアップに繋げていく必要があるのです。