【中小企業の銀行対策】会社の数字を「見える化」する重要性とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、会社の数字を「見える化」する重要性について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 会社の定量情報をいち早く探知する
2 会社の数字を「見える化」するのは銀行のためだけではない
どうぞ、ご一読下さい。
1 会社の定量情報をいち早く探知する
非上場でオーナー経営者の中小企業は、一般の投資家から資金調達をしているわけではないので、上場企業のIRに相当するような経営情報の開示を所管庁より義務付けられているわけではありません。
だから、というわけではないのですが、中小企業経営者の中には、長年の経験と勘に基づいて、「なんとなく」会社を回している経営者がいないわけではありません。
確かに、経営者として、長年にわたる経験値から、経営判断をすることには一定の合理性があるのかもしれません。
しかしながら、特に、新型コロナウイルス感染症拡大以降、中小企業を巡る外部環境は、大きく変動して、少なからぬ中小企業が、ネガティブな外部環境に翻弄されているのは否定できません。
コロナ禍前には想定できなかったような円安による原材料価格の高騰、人手不足は、中小企業を直撃しています。
このような激しい変化の中では、長年の経験と勘が必ずしもヒットしなくなることも大いにあり得ます。
元々、創業者の中小企業経営者は、営業畑の人が多く、数字に敏感な階層であると北出は感じています。
なので、長年の経験と勘が当たっていることを確認するためにも、会社の定量情報をいち早くアップデートして、異常値があればその異常値を早期探知して、不具合があれば速攻で修正をかけなければなりません。
会社の定量情報で最も経営者が把握しやすいのが試算表です。
経理周りについては、会社によってやり方がまちまちです。
自社で振替伝票を起こして、会計ソフトに経理担当者が入力して、会計事務所はそれをチェックするだけというような体制を組んでいる会社もあれば、当座勘定明細書、通帳の写し、請求書・領収書の原本を会計事務所に丸投げして、会計ソフトに入力をお願いする会社もあります。
中小企業の場合、どうしても、間接部門である経理部門に十分な人材を投入できていない会社もなきにしもあらずなので、給与計算も含めて、会計事務所に丸投げしてアウトソーシングするのも悪くはありません。
北出から見て困ることは、試算表のアップデートが遅い会社が少なからず存在することです。
きっちり経理が回っている会社だと、前月の試算表が早ければ当月15日前後に上がってくる会社もあれば、3ヶ月前の試算表しかない会社もあります。
北出に言わせると、3ヶ月前の試算表では既に過去の遺物でしかなく、まるで、経営者は目隠しをして会社を回しているようなものだと感じています。
経営者は、会社全体を俯瞰しながら、試算表をしっかりと読み解いて、異常値があれば早期探知して、健全ではない状況を一刻も早く修正する必要があります。
2 会社の数字を「見える化」するのは銀行のためだけではない
弊所では、通常、お客様の中小企業経営者に、月次のモニタリング(業況報告)を行ってもらっていますが、モニタリングには試算表は欠かせません。
イメージ的には、毎月15日から月末にかけて、前月試算表と前月までの入出金実績を踏まえた資金繰り表を金融機関に提示しながら、向こう3ヶ月程度の業況推移の見込みを金融機関に開示します。
このため、場合によっては、会社の経理周りの仕事の回し方を変えてもらって、前月の試算表をより早くアップデートできるよう、会計事務所にも働きかけるようにしています。
弊所のように、中小企業の銀行対策をやっていると、試算表や資金繰り表を作成するのは、銀行への業況報告のツールのようになってしまいがちです。
しかしながら、試算表のアップデートを早くして、精度も上げて、向こう6ヶ月先の資金繰りを資金繰り表でシミュレートすることは、銀行のためでもありますが、本質的には、会社のため、経営者のためなのです。
金融機関は、与信判断材料として、定量情報(決算書、試算表、資金繰り表等の数字への評価)だけではなく、経営者の力量や人柄、会社が持つ技術力等の訂正情報を重視するとは言っても、まだまだ金融機関は、定量情報重視であることには変わりはないのです。
このため、中小企業経営者は、取引金融機関との信頼関係構築のため、定量情報を月次で開示しながら、モニタリングの席で、自らの経営者としてのキャラクターを押し出すことで、より充実した定性情報を発することが必要です。
中小企業経営者は、経理部門は直接収益を産まない間接部門だという認識は捨て去って、経理部門こそ、会社の中枢であることを認識して、会社の定量情報をより一層充実させていく必要があるのです。