【中小企業の銀行対策】政府系金融機関をよく知っておくべき理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、政府系金融機関をよく知っておくべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 日本政策金融公庫への理解を深めておく
2 商工中金をうまく活用する
どうぞ、ご一読下さい。
1 日本政策金融公庫への理解を深めておく
中小企業で、日本政策金融公庫から資金を借り入れていない会社は極めて珍しいと言えます。
民間金融機関からの借入金がない中小企業や小規模事業者であっても、日本政策金融公庫からは借入を起こしているケースが見受けられます。
日本政策金融公庫は政府系金融機関の一つで、ざっくり言えば、旧国民生活金融公庫、旧中小企業金融公庫ならびに(一般的な中小企業には馴染みが薄いですが)旧農林漁業金融公庫とが合併してできたものです。
現在は、旧国民生活金融公庫は国民生活事業、旧中小企業金融公庫は中小事業、旧農林漁業金融公庫は農林漁業事業とで構成されていて、一般的には、3つの事業は独立していて、北出が知る限り、融資先の情報共有は行われていないようです。
中小企業や小規模事業者は国民生活事業、中小企業や中堅企業は中小事業と窓口が分かれていますが、いずれの事業も、運転資金も設備資金も取り扱っています。
日本政策金融公庫の借入には、様々な制度融資がありますが、民間金融機関があまり取り組みたがらない創業資金について、多くの中小企業が事業立ち上げ時に創業資金からお世話になっていることからも、会社が創業期から安定期に移行しても、引き続き日本公庫から融資を受けているケースが多いのです。
日本公庫の融資の魅力の一つが、低利、かつ、固定金利であることです。
低利、固定金利は、なかなか中小企業や小規模事業者向けの民間金融機関の融資では取り組みにくいので、中小企業、小規模事業者は、日本公庫からの借入を行わない理由はありません。
また、近時では、新型コロナウイルス感染症拡大期には、返済期間が15年、20年といった超長期のコロナ資金を取り扱っていたこともあり、新型コロナウイルス感染症拡大期で甚大な影響を受けた中小サービス業の事業継続に大きく貢献しました。
中小事業では、比較的規模の大きな中小企業や中堅企業が対象となっています。
加えて、商工会議所や商工会を窓口としたマル経融資は、固定金利、低利、無担保無保証という破格の条件を提示しているので、小規模事業者にはマル経融資を資金調達の選択肢とするのは賢明な経営判断であるとも言えます。
このように、特に、中小企業、小規模事業者にとって、日本政策金融公庫は優しい存在なのです。

2 商工中金をうまく活用する
政府系金融機関といえば、日本公庫と同様に、忘れてはいけない存在が商工中金(商工組合中央金庫)です。
商工中金は、全国の主要な街に支店があって、一部、個人向けリテール業務をやっていますが、基本的には、中小企業の様々な事業資金に対応しています。
日本公庫よりは少し取引先の規模が大きめのイメージがありますが、中小企業であれば事業資金に対応してくれて、格別売上高がいくら以上なければならないといった類の制約はありません。
商工中金も実に様々な制度融資がラインナップされていて、代表的な制度融資が地元のトラック協会が保証をつけてくれる運送業者向けの事業資金です。
最近のトラックは、10トン車を中心に、車両代金が20百万円近くと高額であるため、商工中金の低利の制度融資は有効です。
さらに、危機対応時の制度融資も充実しているので、商工中金も中小企業の資金調達には欠かせない存在です。
政府系金融機関の意外な活用方法としては、例えば、金額が大きな設備資金の場合で、メインバンク単独での対応が難しいケースでは、メインバンクと政府系金融機関とが協調して資金を対応してくれるケースが珍しくありません。
メインバンクとの信頼関係構築は、中小企業経営者にとっては極めて重要な仕事ですが、政府系金融機関をうまく活用することで、円滑な資金調達が可能となるケースが想定されます。
とはいえ、政府系金融機関だけでのお付き合いでは商いを大きくすることはできません。
中小企業経営者は、あくまでも、政府系金融機関からの資金調達は補助的なものと認識をして、常日頃から、メインバンクとの信頼関係をより深める経営努力を怠ってはならないのです。